自分らしく
〈近畿圏枝毛線巡礼〉(11)神戸電鉄 有馬線

古代から知られた名湯への鉄道路線
有馬温泉は六甲山の裏手にある古い温泉地で、清少納言の『枕草子』にも「ななくりの湯」「たまつくりの湯」と並んで、「ありまの湯」として記述されています。いまでいう温泉マイベスト3ですね。また豊臣秀吉は有馬の湯を愛し、生涯で9回も訪れているそうです。
有馬温泉へ行く唯一の鉄道は、『神戸電鉄』の『有馬線』です。路線図では、有馬線は神戸市の『新開地駅』から『有馬温泉駅』までの区間になっていますが、実際にはほとんどの列車が『三田(さんだ)駅』方面に直通してしまい、有馬温泉駅に行くには『有馬口駅』で乗り換えとなります。
有馬口駅で降りて構内踏切を渡り、停車中の3輌編成の電車に乗り換えます。電車はすぐに発車し、右へ大きく曲がって山の中へ分け入っていきます。有馬温泉駅まで途中駅はなく、阪神高速道路『有馬口ジャンクション』の下をくぐり、右に左にカーブしながらトンネルを抜けると、もうそこは有馬温泉駅です。4分ほどの短い旅ですが、登山電車に乗っているような感覚を味わうことができます。
乗っていたお客さんはスーツケースを抱えた遠方からの観光客もいますが、どちらかというとカジュアルな雰囲気の方が多く、その会話から推測すると、神戸や大阪方面から日帰りで温泉を楽しみに来た方々のようです。
こぢんまりとした駅舎を出ると、やはりそこは名だたる観光地。お土産やさまざまな物産を売る店が建ち並び、また渓谷にそった道路を少し歩くと、立派な温泉旅館や観光ホテルが到着するお客さんを待っていました。
その名もズバリ『温泉禅寺』、さらに登ると『湯泉神社』が
ホテル・旅館街を抜けた高台に、行基の建立と伝えられる黄檗宗『温泉禅寺』があり、さらに階段を登ると『湯泉神社』(写真)があります。有馬の氏神であり、温泉の守護神としてあがめられており、祈願すれば子宝に恵まれると伝えられています。
有馬温泉駅の構内に、『金泉堂』の小さな売店があります。味見をさせてもらった『金泉焼』は薄べったい大福のような外見ですが、表面に塗られた醤油と中に入っている餡のマリアージュが楽しく、クセになる味でした。さっそく購入です。ちなみに「金泉」とは、有馬の湯のなかでも、湧出時は透明なのに空気に触れると赤くなる湯のことだそうです。
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近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。
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