乳がん生活:患者力:頼れるプロ

〈英国ロイヤルフリーホスピタルの現場から〉
(2)The staff clinic to be aware of staff well-being

私がボランテイアとして働く英国ロイヤルフリーホスピタルは、患者さんだけでなく、病院で働くスタッフにも無料でマッサージセラピーを行っています。このサービスはキース・ハントが患者さんのためにマッサージセラピー立ち上げたときに、それをみていたスタッフからの要望がきっかけで徐々に定着したそうです。現在は「スタッフクリニック」として続いており、予約の取りにくい日もあるほど大好評です。ご存知のように病院内の仕事は大変ハードです。個々のプレッシャーも大きいです。そんな激務のなかのマッサージセラピーは一人ひとりのスタッフの癒しの時間をつくっていると思います。特に施術がが終わったときのスタッフの表情がいいです。

この「スタッフクリニック」はコロナ禍のときに、大活躍をしていました。2020年3月にコロナ感染拡大を防ぐため、最初のロックダウンがイギリスで始まったとき、マッサージセラピーは濃厚接触になるのですべて活動は中止になりました。セラピストたちは自宅待機を余儀なくされています。感染拡大のカーブが緩やかになったときに同年夏ころ(患者さんはまだNG)病院で働くスタッフクリニックが再開し、セラピストたちも激務のスタッフにずっと寄り添い施術を行っていたそうです。病院内ではまだコロナ患者さんが多数入院されていたので、病院の真後ろにある福利厚生施設のレクリエーションクラブを借りて、チームは活動していました。

当時、英国全体がコロナ感染で、ピリピリした時期です。チームはスタッフやセラピストの安全・安心を考え、スタッフのマッサージセラピーは続けたそうです。コロナと一緒に戦った同士的なつながりもできたのではないでしょうか、今でのそのときのことを話してくださるスタッフもいます。個人的な考えですが、私はマッサージセラピーの活動は、「人と人のつながり」と思っています。施術で手袋やエプロンをつけていたとしても、人のぬくもりは伝わります。

ワクチン接種が進み、感染が落ち着いたころの2021年春に、補完医療チームは病院内の事務所に戻れました。最初は「スタッフクリニック」を行ってていましたが、夏ころに病棟でのマッサージセラピーが少しずつ限定的に再開されました。まだ患者さんへの家族や友人の訪問が限られているなか、マッサージセラピストの訪問は”more than welcome”(よく来てくれたわね)と迎えられ、小さな楽しみを待ちわびた人が多かったことを表していました。

こういった患者さんの病気に取り組んでいる医師や看護師、食事提供をしてくださるケータリングの人、お掃除の人など多くの人が、患者さんの日々の生活に関わっています。現場で働く人のポジテイプなエネルギーや思いやりは患者さんにも伝わると私は思います。そういった場のつくりだす空気感が、患者力をアップするきっかけになっているかもしれません。

サポーター

木島陽子
木島陽子
家族の病気をきっかけに補完療法であるアロマテラピーに目覚め、20年間勤めていた航空会社を退職して渡英。英国セラピストの資格取得後、2018年ロイヤルフリーホスピタルのオブサーバーとして採用され、先輩セラピストと共に病棟でのマッサージサーピス活動に参加する。現在も英国ロイヤルフリーホスピタルの補完療法である募金活動に参加し、2022年10月開催のロンドンマラソンにも出走予定。皆様の温かい支援、応援を呼びかけている。
現在は、再びロイヤルフリー病院の補完医療チームに復帰。コロナと共にある病院でのマッサージセラピーの活動に参加し、患者力アップのボランティア活動に参加。看護・介護だけでなく、趣味のマラソンでもフリーランスライターとして活躍中。

プロフィール