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〈バレエへの招待〉(9)オペラのなかのバレエ

フランスではオペラとバレエは不可分

日本では一般に、オペラとバレエはまったくジャンルの違う舞台芸術だと考えられていて、ファン層もあまり重なっていません。オペラ・ファンがバレエの舞台を見ることは少なく、反対にバレエ・ファンはオペラのことをあまりよく知らなかったりします。

しかしフランスでは、オペラとバレエは不可分のものとして発展してきた歴史があります。『グランド・オペラ』は19世紀の前半、フランスのオペラ座を中心に発展したオペラの一形式で、4幕から5幕からなる大規模な作品群のことを指します。セリフがなく、『レチタティーボ』(話すような感じで歌われる独唱)のみで演じられるオペラで、今日でも上演される『ファウスト』などがその代表的な作品です。多数の出演者や演奏者、大規模な舞台装置、スペクタクルな視覚効果に加え、ほとんどの作品でバレエが躍られるのが特徴です。

ところが、これらの『グランド・オペラ』は長時間に及ぶ上演や制作コストが膨大にかかることが嫌われ、19世紀半ばには早くもすたれてしまいました。それに伴い、これらの作品のなかのバレエ部分も踊られる機会がなくなってしまいました。

今日に残るオペラのなかのバレエ

『グランド・オペラ』のなかのバレエがすべて失われたかというとそうでもなく、フィリップ・ラモー作曲の『優雅なインド人』の第4幕で踊られるバレエは、パリ・オペラ座バレエ団の重要なレパートリーになっています。

また、『グランド・オペラ』以後に作られたオペラ作品にもバレエを含むものがあり、オペラ『イーゴリ公』のなかの『韃靼人の踊り』やオペラ『ジョコンダ』のなかの『時の踊り』などは、独立したバレエ作品として上演されることがあります。

サポーター

加集 大輔
加集 大輔
お笑いバレエ・ライター。
子どもの頃からの憧れだったクラシック・バレエを30代から習い始める。この経験をもとにバレエ誌に寄稿するようになり、その後、バレエ関連のライターとして活躍中。

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