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〈術後運動〉「握る」の改善

今回は、手の大切な役割である「握る」を改善していきましょう。手のひらや手首が主体となっている動作で肩は関係なさそうにみえますが、大切な役割があります。

「握る」とき、肩はどんな役割をしているの?

手で何かを握ろうとするとき、物がある方向へ肩を動かしていませんか? このとき、知らずに肩の筋肉も使われています。間接的ではありますが、とても大切な役割です。

また、何かを握るとき、握った腕全体は血圧が上がる仕組みになっています。何もしていない(安静/脱力)状態から身体を動かすと、筋肉を使いますよね。使われている筋肉には血流が増えるので、肩周辺の局所血圧も上がる仕組みになっているのです。

手のひら、指にもそれぞれ役割がある

手のひら、指には得意なことと不得意なことがあります。親指から中指までの3本指は「器用に動く作業の指」です。何かを摘まむとき、操作するときに活躍するのがこの3本です。そして薬指と小指は、「力を込めて握る」のが得意な指です。テニスラケットやゴルフクラブを握るときに大切なのが、この2本です。

同じように手のひらを真ん中から二つに分けると、動きが大きく出る親指側(母指球)と、固定力の高い小指側(小指球)に別れています。これから行うトレーニングでも、それぞれの役割を意識してみてください。

握るトレーニング1〜握る練習をしましょう〜

①手のひらを上に向けて身体の前に出す
②小指側から1本ずつ順番に握る
③5本握ったら、少しずつ力を込めて「ギュっ」と握り込む
④肩甲骨から力を伝えるイメージで握り込む
⑤小指側から順番に手を開いていく
⑥最初はゆっくり丁寧に、慣れてきたらリズミカルに20回~30回行う

握るトレーニング2〜握る力を鍛えましょう〜

①手のひらサイズのゴムボールを用意
 Amazonや100円均一のおもちゃコーナーにあります
②トレーニング1と同じ手順でボールを握る
③「3秒間にぎって緩める」を1セットにして、20~30回セット繰り返す
④腕を前に出す、腕を横に伸ばすなど、いろいろな角度で握る

今回の「握る」トレーニングまでの3回が、初期のリハビリ&トレーニングです。
(1)可動域を戻す
(2)筋肉に力を入れる
(3)握る

毎日、時間をつくって実践していきましょう。リハビリ&トレーニングは最初が肝になってきます。生活の一部に取り込めるよう挑戦してみてくださいね。

サポーター

長尾 樹
長尾 樹
1984年9月17日生まれ。
スポーツトレーナーとしてさまざまな競技チームと鍼灸マッサージ院で経験を積み、2014年より広尾にコンディショニングルームをオープン。
乳癌を発症してからゴルフに復帰するまでのクライアントのコンディショニングを総合的にマネジメントした経験をもつ。
資格:鍼灸師/あん摩マッサージ指圧師/JSPOアスレティックトレーナー

プロフィール