乳がん生活:患者力:頼れるプロ

マッサージの効果(1)

社会人になって最初に就職したのがマッサージ治療院だったこともあり、現在もマッサージを中心としたマニュアルセラピーのお客様を中心とした仕事を行っています。マッサージというと「技術職」のイメージが強いと思いますが、今回は可能な限り「科学して」みたいと思います。

ロジックにこだわる前に、技術を身につけることが先です。これは受け手の存在がないとマッサージというものが成り立たないため、まずは相手に受け入れてもらうために技術が不可欠だからです。マッサージリテラシーの高い人に受け入れてもらうためには「石の上にも3年」が必要で、これは1万時間の法則が成り立ちます。

「触れる」ということ

人間は「ヒト」であり哺乳類です。人間や人と表されると文化的な側面を想像しますが、生物であるという面から「ヒト」と表記します。生物は爬虫類から哺乳類へと進化したなかで、群れや集団を形成し社会性を獲得してきました。なぜ集団を形成したかというと、生存するために必要だったからです。

動物のテレビ番組を思い出すと、どの動物も同一の集団でスキンシップによるコミュニケーションを取っています。サルの毛づくろいや、像が鼻を絡ませるシーンなどです。「触れる」という原点はまさにここです。「触れることによって、安心と安全を感じる」というのがマニュアルセラピーを受ける根源的欲求になっていると考えています。安心して緊張をやわらげたいのですね。

マッサージは筋肉を緩めているのでしょうか?

「筋肉を緩める」という言葉は、イメージしやすいですね。私も以前は多いときで1日10人、10時間、ほぼ筋肉トークをしながら筋肉マッサージを行っていました。そして毎週来てくれていた方々に「マッサージよりも筋肉を鍛えて、コラらない身体にしましょう」なんてお話していました。

鍛えたら筋肉は張らないし、コラない。そんなわけがありませんが(苦笑)、最近はさまざまな研究で、「筋肉に圧力をかけることで筋肉中の疲労物質濃度が下がった」という結果や、「筋肉の硬さを硬度計で計測した結果がやわらかくなっていた」というデータは出ています、また2012年には「ミトコンドリアの活性が上がった」という報告もあがっています。

(来月に続く)

サポーター

長尾 樹
長尾 樹
1984年9月17日生まれ。
スポーツトレーナーとしてさまざまな競技チームと鍼灸マッサージ院で経験を積み、2014年より広尾にコンディショニングルームをオープン。
乳癌を発症してからゴルフに復帰するまでのクライアントのコンディショニングを総合的にマネジメントした経験をもつ。
資格:鍼灸師/あん摩マッサージ指圧師/JSPOアスレティックトレーナー

プロフィール