乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

〈乳がん〉にはリハビリが必要。これは知らなかった

手術後1年経った頃、腕が上がらなくなる

ちょうど手術してから1年経った頃、手術した側の腕が徐々に上がらなくなるのを日々感じていました。キッチンの高い棚に手が届かない、シャンプーしづらい、かぶる服の脱ぎ着ができないなど、不便に感じるのみならず、無理に使おうとすると激痛が走りました。

それでも、「いわゆる四十肩か?」とそれほど気にしていませんでした。放射線科の定期診察のとき先生に「腕が上がらなくなった」と訴えたところ、「リハビリ科にかかったか?」と問われ、「まだ」と答えたら、その場で予約をしてくれました。そのときに、リハビリ科がこの病院にあること、また、がん患者もリハビリをやることもあるのだと初めて知りました。

リハビリのスタート

早速、リハビリ科の先生に計画を立ててもらい、人生初のリハビリをスタート。プランは、作業療法士(OT=Operational Therapist)の先生のもとに月2回通院、その間は自宅でOTの先生に習った運動を続けるというもの。2週間ごとにOTの先生に前回からの改善度合いを見てもらうために、大きな分度器のようなもので腕の角度を測ったり腕を動かすという習慣が始まりました。

病院で習ったことを毎日続けていくと、腕が少しずつですが上がるようになるのが分かり励みになりました。途中、腕を上げる運動をやりすぎて腕の付け根の下あたりで「ベリッ」と音がしたようで、激痛が走りました。先生からは「なかの組織の癒着が剥がれたのでは」と言われました。驚きましたが、「大丈夫、無理しないでね」とアドバイスされ、一気にやりすぎることを注意しつつなんと6か月で卒業となったのです。

なぜ、動かなくなったのか?

手術の影響で筋肉やわきの下の皮膚が縮むため、少しでも動かすと肩関節が突っ張ったり痛んだりします。それにより意識的に運動を制限しがちになります。このまま腕を動かさずにいると筋力が低下し、動かせる範囲が狭くなります。そのために関節や筋肉が硬くなって、洋服を着る、髪をとかすなどの日常動作に不便が生じることがあります。ほんの少しずつでも動かしたほうが、後の運動が楽になります。

●国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/rehabilitation/mastectomy.html

手術痕がぶつからないように外の障害物や車内で人を避けようと、肩が前に入ってしまい、さらに積極的に動かそうとしないため、組織が固まってしまうみたいです。さらに、放射線照射の影響で皮膚自体が硬くなって伸縮しなくなるので、いっそう動かしにくい状態となるようです。

緒方 佳美
プロフィール

サポーター

緒方佳美
緒方佳美
外資系企業数社を経て退社。
その後、乳がん発症。トリプルネガティブと診断され、術前抗がん剤治療、部分摘出手術、放射線治療を経験。家族にもがん体験者あり。治療中から、がんと仕事の両立支援や、がん体験者のための支援活動を考える。乳がん体験者コーディネーター(BEC)認定。
2018年10月、株式会社オフィスオガタ設立(人材紹介・コンサルティング業)。
多様性を認める社会形成への貢献を意識し、東北支援活動、地元の景観まちづくりの会での活動を通じて地域とのつながりも大事にしている。

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