乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

乳房再建への道(2)

まずは場所をつくる

「エキスパンダー」というのは、その名のとおり風船のようなものを胸に入れて、少しずつ膨らましていきながら皮膚を伸ばし、中に入れるスペースをつくる目的で入れるものです。皮膚を伸ばすという段階があるため、放射線治療をした場合は皮膚がうまく伸びず、きれいな胸がつくりにくいということになります。

このエキスパンダ―を入れる時期により、「一次再建」と「二次再建」に分かれます(「一期」「二期」という言い方もあります)。特にリンパへの浸潤などがなければ、〈乳がん〉の手術と同時にエキスパンダーも入れてしまう一次再建。この場合は胸の喪失感などなく、ステップも一つで済みます。私の場合は慎重にまず全摘、そして2年あけて問題なければエキスパンダ―を入れる、という二次再建でした。

なお近年、お胸の大きさによってはエキスパンダ―を入れるステップなしに、ブラバ(BRAVA)といういわゆる豊胸手術に使う対外的エキスパンダーによって、外側から皮膚を伸ばしてから自家組織や脂肪を注入する方法もオプションとして出てきました。

エキスパンダーの種類もいろいろ

ふつうの胸は皮膚と筋肉の間に乳房がありますが、再建する場合、皮膚の直下につくれないので、大筋肉の下側に空間をつくっていきます。健側と比べて少し硬い感じにはなります。まず手術で風船を入れ、通院の度に生理的食塩水を少しずつ入れていきながら皮膚を伸ばしていきます。

中に入れる型については当時保険適用になるのがおわん型のみでしたが、自然な胸の形に近いしずく型の方が形よくできるということで、事前に自費で個人輸入する形でしずく型を用意しました。

しかし、これは後日エキスパンダー挿入の術中に破れてしまったため、結果的に予備のおわん型を入れることになってしまいました。なかなか思いどおりにいきません。幸か不幸か、当時2年待ち、3年待ちといわれた本手術を「できるだけ早く入れ替えたい」とのことでいきなり半年後にやることになったのです。

戻ってきた胸のふくらみ

二次再建だった私の場合はフラットになってしまった胸時代も経験したので、エキスパンダーを入れただけでも、元の胸が戻ってきたたようでうれしくなりました。形成外科の先生にも「これでけっこう満足してしまうかも。(自家組織の)本手術いらないかもしれません!」と話したぐらいです。先生は「それならシリコン入れてあげるよ」とおっしゃっていました。それを聞いて、本番でエベレスト登山の覚悟ができなければ、それもよいかと思っていました。中に入れるものは、自分の肉でもシリコンでも、ミックス(人工物と脂肪など)でも選択肢があるということですね。

サポーター

Chicca
Chicca
マーケティングコンサル会社代表。
福岡県出身。高校時代に海外留学。大学卒業後、証券会社の海外勤務、内外化粧品会社マネジメント、事業開発、マーケティング、ラグジュアリーブランド、海外化粧品ブランド日本代表などを経て、現在に至る。
44歳のときに左乳がん発症。部分摘出、全摘手術の2度にわたる手術を経て、2年後に自家組織による再建に着手。2019年卒業。
趣味は、旅行、温泉、茶道、書道、着物、アルゼンチンタンゴ。

プロフィール