自分らしく

日本の色名を紐解く

自然からの授かりもの

日本人は万葉のころから自然を敬い、自然と共存してきました。ですから、四季の移ろいに敏感で、その変化を愛で、そこからさまざまな文化、風習が生まれてきました。

色の名前も、その一例です。日本人は色の微妙な違いを識別し、その微妙な色合いの違いを言い表す美しい色名を付けることで、美意識を洗練させてきたとも言われています。日本の色名は主に植物の名前からとったものが多く、西洋の色名が鉱物系の名前が多いのとは対照的です。

植物から取った名前が多いのは

日本人が自然を愛し、自然と共存してきたこともありますが、豊かな自然のなかの植物から色を抽出して染色していたことも一因と考えられます。

高貴な色とされる紫色を染めるには紫草の根「紫根」を使います。ちなみみに、その根には抗菌作用や解毒作用もあるといわれています。赤色を染めるには、紅花の花びらからか、日本茜の根から色素を抽出します。土にまみれた根のなかに美しい色を染める色素が潜んでいると誰が見つけたのでしょう。先人たちの試みと知恵に驚きと尊敬の念を感じます。

紫色のバリエーション

紫根や藍や蘇芳などから染めた色は大まかな括りの「紫色」に染まりますが、「紫色」には多くの色味の違いがあります。藤色、藤紫色、桔梗色、紫苑色、菫色、あやめ色、杜若色など花からとった名前が多くあります。花の微妙な色味の違いによって、名前が細分化されています。

他に藍染の色をかけ合わせてつくる二藍。鳩の羽の色から取った鳩羽色。また、京都で主に染められていた赤紫色を京紫と呼び、それに対して江戸紫は青味がかった青紫色です。これは、染色に使う水質の違いが起因しているのではないかともいわれています。

色名を紐解く

色につけられた和名を知ることによって、現代の日本人が忘れがちな自然に対する感受性をとり戻すことができると思います。また、染色に関わる知識を得ることによって、伝統的な色彩感覚を蘇らせることもできますし、植物の力を再認識することもできると思います。

サポーター

落合邦子
落合邦子
フラワーデザイナー。
「女性が一生続けられる仕事は?」と思い、6年間の会社勤めを辞めて花の仕事を始動。フラワースクール、ウェディングブーケ、空間装飾の業務を続けるなか、介護が必要となった両親やがん治療中の家族などを通して花や植物のもつ力に注目。また、天然香料のアロマフレグランスの調合も実践。

有限会社アトリエオルタンシア 代表取締役
2014年 パリにて個展開催
2017年 パリの美術展Salon des beaux arts の招待作家として出展し、審査員特別賞を受賞

プロフィール