自分らしく

犬との暮らし(1)

初めての犬との生活

夫と知り合ったとき、夫の家にはホームズという名の雄犬がいました。当時、彼は7歳くらい、柴犬とレトリバーのミックス犬(おそらく)で、ややビッグサイズの中型犬でした。

それまで文鳥やセキセイインコと暮らしたことはありましたが、犬と身近に接するのはホームズが初めての経験。子犬ではなく、すでにシニア犬の域に入っていた彼の生活に、途中から入ってきた私になついてくれるかどうか不安もありましたが、「君は誰に嫁いだの?」と夫に冗談をいわれるほど、大の仲良しになりました。

分離不安症を抱えて

ホームズには「分離不安症」の傾向がありました。犬の「分離不安症」は、精神的・肉体的に大きなストレスを抱えてしまう精神病の一種です。飼い主と離れることへの不安やトラウマから引き起こされることが多く、破壊行動や失禁、過剰に吠える、自傷行為といった問題行動を伴う場合があるといわれています。夫には少々複雑な事情があったため、ホームズがシニア犬になるまでの間、主に面倒を見てくれるのは夫だけ。その夫は働き盛りで帰宅時間も一定ではなく、朝出かけたら、次はいつ帰ってくるのかわからないという環境が影響をしたのではないかと思います。

私が家族に加わったことで、ひとりで過ごす時間も減り、大好きな散歩の回数は増えました。ただ、やはり子犬のころからずっと面倒を見てくれた夫の存在は絶対的で、いくら私になついたとはいえ彼にとってのリーダーは夫以外にはおらず、私は後から加わった妹分のような感じでした。

愛情を分かち合えるということ

病を抱える犬との暮らしは当然大変なこともありますが、逆に得たものもたくさんあります。運動が苦手で喘息もち、体力に自信がなかった私が朝晩2回の散歩をすることで歩くことへの自信が徐々につき、次第に季節の変化を楽しむ精神的余裕が生まれたこと。また愛情をこちらから注ぐだけではなく、愛情をもって接すれば犬の方もそれに応えてくれるということがどれほどありがたいことなのかを学ばせてもらった気がします。

犬との暮らしは、今まで知らなかった新しい世界を経験させてくれる大切な時間となっていくのです。

サポーター

ひらい まさよ
ひらい まさよ
アクセサリー作家。
子どもの頃から「装う」ことに興味津々。外資系企業勤務のかたわら、全身のコーディネートに欠かせないアクセサリーづくりを独学で始める。大人ならではの装いのアクセントでありつつ、気負わずにさらりと気軽に身に着けられるアイテムづくりを目指す。
被爆者であった父の悪性リンパ腫、大腸がんの10年以上にも及ぶ闘病に寄り添い、夫をも膵臓がんで失うという経験をもつ。

プロフィール