自分らしく

〈絵本は心のお薬 〉(5)『いつか あなたを わすれても』

絵本は子どものために書かれたものですが、大人にもいいものです。心に響いたり、深い気づきがあったり、忘れていた思い出がよみがえったり…。大人の心に効く絵本を、絵本専門士で絵本セラピストの大江美保子がお届けします。

これは、私たちの大切な大切な順番

老いて人生の終わりを迎えようとしている老女、
記憶のなくなりつつある母との思い出を綴る女、
女の子から女の人になろうとしている少女、
そんな、人生の順番を描いている絵本です。

今まで、どんな順番で来たのだろうか…。
今、自分はどの順番に来ているのだろうか…。
そして、これから、どんな順番がやってくるのだろうか…。

そんなことを考えさせられる絵本です。

効能

痴呆症で記憶をなくしつつある祖母。それを見て「母親もいずれ自分のことを忘れてしまうのだろうか…」と不安に思う娘に対して、母親はこう答えます。

「もしも
いつかあなたを わすれる日がきても
わすれてしまう あれもこれも
みんな なかったことでは ないのだから
あんしんしてね」   
(本文より抜粋)

そう…
たとえ、忘れられても、そこに確かにあった時間。
その事実は決してなくならない。

人生は限られています。命は時間でもあります。
当たり前だけれど、当たり前すぎて、忘れてしまっています。

いま、ある確かな時間を大切に紡いでいこう…
改めて生き方を考える効能がある絵本です。

▼『いつか あなたを わすれても』
文:桜木 紫乃 絵:オザワ ミカ 出版:集英社
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-299028-2

サポーター

大江美保子
大江美保子
絵本セラピスト®︎/心理カウンセラー
プログラマー、シナリオライターなどを経て、3人の子育て中に絵本の読み聞かせのボランティアを始める。
2015年6月、乳がんの宣告を受け絶望のどん底に突き落とされる。そのとき、何気なく手にした一冊の絵本『でこちゃん』(つちだのぶこ作/絵 PHP出版)から深い「気づき」を受ける。絵本が大人に与える力に感銘し、その体験から『絵本セラピスト®️』となり活動開始。
病院や患者の会、子育てサロン、カフェにて大人の人に絵本を届けるセミナーを毎月開催。
エッセー風の絵本紹介ブログ、メルマガを毎日更新している。

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