自分らしく

患者力って? ~もっと自分の気持ちを伝えていい~

「がん」の告知をうけたときから病院の選択、治療方法…仕事、生活。突然迫られるいろんな選択に迷い、答えの出ない不安を抱えませんか?

スーパー患者“うさぎちゃん”

心に残る女性のお話です。“彼女”と呼ぶのも淋しいので、“うさぎちゃん”と呼ばせてもらいます。

私が“うさぎちゃん”と出会ったのは、私自身が乳がんと告知される10年以上も前のことでした。仕事で出会った“うさぎちゃん”の職業は、「田舎でのんびり暮らす普通の主婦」でした。

しかし、“うさぎちゃん”はスーパー患者でした。自分で主治医をチームにしてしまったのです。しかも、病院を越えてです。通常の主治医は家から近いA病院、化学療法は隣町のB病院、緩和ケアは家から車で90分はかかるだろうC病院…この3つの病院のドクターをひとつのチームにして“うさぎちゃん”は再発治療と闘いました。

たとえば、東京に住んでいたなら病院や医師を選べる可能性があるかもしれません。研究が進んだ病院や有名な先生に診てもらいたいという希望が叶うかもしれません。しかし、地方では、「がんの治療と言えばこの病院」というように地域で治療ができるところは限られていて、もう、その病院を信じるしかないのが多くの人の心境です。

かかった病院で最善の治療をしてもらう。それは今もリアルなことです。そんななかで、“うさぎちゃん”は画期的な患者でした。“うさぎちゃん”は自分の医療チームを誇らしく語っていました。

そして数年後、私は罹患しました。もちろん、ここまで手術方式や治療方法を納得して前に進んできました。でも、なぜか「すっきりしていない自分」を今も抱えているのです。どうしてなのでしょうか?

“うさぎちゃん2号”の登場

この1年ほどで、私の前に“うさぎちゃん2号”が現れました。“うさぎちゃん2号”は自分が納得できるまで病院を渡り歩き、ようやく出会えた主治医のもとで治療をしています。ジプシーのように病院を変えることが良いかどうかは私の意見することではありませんが。

“うさぎちゃん”と“うさぎちゃん2号”に共通するのは、信頼できる医療者との出会いではないかと思いました。自分と向き合ってくれる医療者。病気ではなく『人』を診てくれる医師との出会いは、長く続く「がん」との暮らしに必要不可欠だと思うのです。

セカンドオピニオンを行って他の医師の考えを聞くことで、あらためて主治医の考えを理解できるとも聞きます。私の心のなかのすっきりしないところは、「自分に納得の理由がないからでは?」と思いました。がん患者として初めてのことばかりの体験のなか、何が正しいのか間違いなのか答えのない迷路を進むためには医療者との心の結びつきが不可欠だと、あらためて思うのです。

「先生と話しをして決められた」というような納得の理由は大切で、自分ひとりで決めたことに自信があるわけもありません。誤解のないように言えば、私は主治医を信頼しています。でも、治療の頃にもっと話す時間があったら良かったなとか、違う先生とも話してみたかったなという気持ちが残っています。

これからさまざまな選択をする方がいるならば、遠慮なく「自分の気持ちを伝えてほしい」と届くといいなと思っています。

最後に先生の前でどうしても緊張してしまう人へ…
●聞きたいことをメモして行く
●メモも読めないほど遠慮してしまうなら、メモを渡す<がんばって!>
●可能なら診察のときに誰かに付き添ってもらう

Author profile

小口浩美
小口浩美
テレビ番組ディレクター。50歳代。長野県在住。
フリーランスのディレクターとして、ドキュメンタリーやニュース、情報系番組などの制作に携わる。2015年、乳がんで右乳房全摘手術。その後、化学療法、放射線治療を受け、現在、ホルモン療法中。がんサバイバーになったことがきっかけで、正直に生きることを心に、野球観戦に夢中。

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