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乳がんサバイバーに運動を、もっと安全に(1)

がんサバイバーの運動ガイドラインは、
一般の成人の生活習慣病予防の運動指標

■更新される運動ガイドライン
病院の待合室に置かれている小冊子で、『がん患者の運動ガイドライン』というものを目にされたことはあるでしょうか? もしくは、そのガイドラインをもとに主治医から運動を奨められたことはないでしょうか? 

それによると、「週に中~高程度の有酸素運動を150分以上 + 筋力トレーニングを2~3回以上」が有効とされています。これらの数値は、米国スポーツ医学会(ACSM)や米国がん協会(ACS)などで推奨され、日本でも採用されています。

しかし、2019年4月にインターナショナルな理学療法学会で新しい発表があり、「週に中~高程度の有酸素運動が300分 + 筋力トレーニングが2~3回以上」と、有酸素運動が大きく増加されたのです。これにより、近い将来、ACSM、ACSなどもそれに倣っていくことが予想されます。日本で現在推奨されている数値も、近いうちに変わっていくことになります。

■ガイドラインどおりの実施は、日本の環境では厳しい
この中身をじっくり考えると、驚くべきことに気づきます。1週間に300分の中~高程度の有酸素運動とは、単純に考えると「毎日60分以上の早歩きを週5回行う」ということになります。

欧米のようにフィットネスクラブ(ジム)の加入率が15%を超えているような場合なら、雨の日でもジムでランニングマシーンの上で早歩きをと考えられますが、日本では5%にも及びません。また、ランニングマシーンの使用を多くのジムでは20分などと時間制限していることもあり、1週間に300分とは現実味を帯びてきません。それなら、「外でのウオーキングでいいのではないか」と考えがちですが、日本は雨も多く、夏は暑く、冬は寒い気候で毎日少なくとも60分をコンスタントにウオーキングするというは、かなりのウオーキング愛好家でもなければ達成は簡単ではありません。

■一般成人の生活習慣病を予防するための運動指標と同じ
そもそもがん患者の運動ガイドラインとは、何が基準となっているかご存知でしょうか? ACSMやACSが実際のがん患者を対象に、「どの程度の有酸素運動を週に何回行えば効果がある」というデータをもとに出された数値ではありません。これらの数値は、がんサバイバーを対象にして収集されたものではなく、一般の成人(18歳~64歳)の生活習慣病を予防するための運動指標なのです。

Author profile

稲葉 晃子
稲葉 晃子
元全日本女子バレーボール選手。現役引退後は、全日本女子バレーやさまざまな競技団などで選手育成に従事。2012年、ロマージュ株式会社を設立。2017年、乳がん発症。左乳房全摘とリンパ郭清、抗がん剤、放射線治療、1年間の治験を終え、現在はがん専門エクササイズトレーナーとして運動指導を行いながら、オリンピックをめざす陸上選手の強化にも注力している。

資格:米国スポーツ医学会・米国がん協会認定Cancer Exercise Trainer / 米国NATA認定Athletic Trainer


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