自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(17)Joy to The World

3人のヴォーカリストと4人の演奏陣

今回は、1971年ビルボード年間チャート1位に輝いた『Joy to The World』をご紹介します。まさにThree Dog Nightの名をもっとも知らしめた”超”大ヒット曲です。

アメリカのロック・バンドに位置付けされるThree Dog Nightは三人のヴォーカリストと4人の演奏陣というユニークな編成で、演奏する曲はこの三人のヴォーカリストがそれぞれ無名のソングライターやバンドの隠れた楽曲を自分達流に仕立て上げ、それをバンドで演奏するというスタイル。ソウルフルなCory Wells、繊細なChuck Negron、温かみを感じさせたDanny Hutton…三者三様のヴォーカルが重層的な世界を構築した結果、グループとしての煌めく音が打ち出されました。

ちなみに”Three Dog Night”というグループ名は、オーストラリアの原住民である「アボリジニは極寒のときに3匹の犬と寝る」という風習に由来しています。アボリジニとは、オーストラリア大陸と周辺島嶼の先住民。

ラジオ番組の穴埋めに起用され、問い合わせ殺到

『Joy to The World』のオリジナルは、カントリー歌手のHoyt Axtonによって書かれた曲です。もともとはアニメ番組『The Happy Song』のために作られましたが、それは実現しませんでした。しかし、Hoyt AxtonがThree Dog Nightの前座でこの曲を歌った際、バンドがこの曲を耳にしたとのこと。3人のヴォーカリストのうち、Danny HuttonとCory Wellsはそんなに乗り気ではなかったようですが、Chuck Negronが気に入りバンドの曲として取り入れられたようです。レコーディングのコーラスには7人のメンバー全員が参加し、サビを合唱しています。それでもやはりメンバー内では評判が悪く、完成したトラックはアルバム『Naturally』のB面ラストに収められました。

『Naturally』からの1stシングルは『One Man Band』で、最高19位というそこそこのヒットでした。そんなころシアトルのAMラジオKJRで働いていたLarry Bergmanが、番組の尺の穴埋め用に流す曲として『Joy to The World』をピックアップ。これを放送でかけたところ、「この曲はどこで手に入るのか」との問い合わせが殺到し、数週後にはKJR全体のチャートでトップとなります。シングル発売されると、たちまち全国区の大ヒットとなりました。

Three Dog Nightが発掘したミュージシャンには後にソロ・アーティストとして成功を収めた者が少なくありません。その一例を記載しておきます。

・Leo Sayer 『The Show Must Go on』
・Harry Edward Nilsson 『One』
・Randy Newman 『Mama Told Me』
・Laura Nyro 『Eli’s Comin’』
・Paul Williams 『An Old Fashioned Love Song』
・Russ Ballard 『Liar』
・Dave Loggins『Pieces of April』

▼Joy to The World

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

プロフィール