自分らしく
こぶし
こぶし
今日も小さな兄弟は
保育園に出発
弟は
大きなバックを肩にかけた
お父さんに抱かれている
兄は
リュックをしょって
弾んで歩き出す
駅への道では人々が
それぞれの今日に向かって
流れている
そんな流れの中で
兄がふと立ち止まり
後ろを振り返って叫んだ
「いってきまーす。
今日も一日がんばるぞ、オーッ」
一瞬目があった
意志ある眼差し
あわてて心の中で
「オーッ」と叫んだ
共にこぶしは挙げられなかったけれど
ある朝、マンションの前の道で、ちょうど出発する幼稚園バスを見かけました。何か所かで子どもたちを乗せて幼稚園に向かうバスなのでしょう、「いってきまーす」と窓いっぱいに小さな手のひらがひらひらと振られて去って行きました。手を振り終わったお父さん、お母さんたちの輪には、朝のひと山をこえたようなほっとした空気が見えました。
別の日には、バスが去ったあとなのでしょう、大人同士の短いおしゃべりをしてから、次のそれぞれのスタートに向けて別れて行くところにも出会いました。
ある朝は、「さっちゃん、よーいどん!」という声が聞こえました。小さなさっちゃんのことを、お母さんが少し後ろから「がんばれがんばれ」と、応援しながら追いかけて行きます。保育園まであと少し。何度か、スタートラインを作って「よーいどん!」の合図をかけてもらいながら走るさっちゃん。きっと、お母さんも、保育園に送り届けたら、自分に「よーいどん!」の声をかけながら、元気に駅まで走って行くことでしょう。
またある日、少し遅い朝に公園の横を通ると、「エーデルワイスさーん」という声が聞こえてきました。「え? エーデルワイスさん???」と思わず、足を止めると、さらに、「スイートピーさーん、ブルーベリーさーん」と呼んでいます。お散歩に来ていた保育園の子どもたちを、保育士さんたちがクラスごとに集めていたのでした。それにしてもとても優雅なクラス名です。
朝には、こんなふうに思わずほおが緩んでしまうシーンに出会うことがあります。そんなときは、ひそかに「エネルギーいただきっ」とつぶやいている私です。
サポーター
- 詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。
プロフィール