自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(13)Sugar Baby Love

夏の海と空に響く爽快なナンバー

お湯が沸くようなイントロから突き抜けるハイトーンボイスとドゥーワップ調のコーラスが重層的にたたみかけてくる爽快なナンバー、それが今回ご紹介する『Sugar Baby Love』です。飲料水のCMやドラマの挿入歌などにたくさん使われているので、「タイトルは知らないけど、曲は知っている」という方も多いでしょう。1974年1月に発売されたこのシングルは、イギリス、スイスおよびドイツのヒットチャートで1位を記録しています。

『Sugar Baby Love』は、イングランドのルーベッツ(The Rubettes)というバンドのデビュー曲です。ルーベッツの面々はもともとスタジオ・ミュージシャンで、1973年、プロデューサーのウェイン・ビッカートンがデモテープを録音するために集られました。そこで演奏をしていくうちに彼らはこの曲(Sugar Baby Love)を気に入り、自分たちの曲としてリリースさせてくれないかとウェインに申し出たのがデビューのきっかけだったようです。

しかし、レコーディングも終了し発売の目前でボーカルを担当したポール・ダ・ヴィンチが脱退してしまいます。ウェインはいろいろ策を考えますが、別のボーカルで録音し直すのではなく、ポールのリードボーカルをそのまま採用してリリースにこぎ着けました。なお、後に正式デビューメンバーとしてボーカルを担当するアラン・ウィリアムスは、この曲のコーラスグループとして参加していた人材です。

新しいポップスの提示

70年代のポップス界が50〜60年代の古き良き曲を当時のままの雰囲気でリバイバルさせたように、ルーベッツの『Sugar Baby Love』もそうした手法を活用しています。ただし他と少し違うのは、彼らがイギリス出身だったことです。当時、マーク・ボランやスージー・クアトロなどが日本でも人気を博していましたが、アメリカではあまり受けませんでした。しかし、U.S. Billboard Hot 100 で37位を記録したこの曲は、そんななかでも健闘したといえるのではないでしょうか。

ルーベッツはもともとはスタジオ・ミュージシャンだったメンバーが集まって結成したグループで、演奏能力は十分。奏でられるサウンドはフォー・シーズンス(アメリカのグループ)のような白人ドゥ・ワップ。そういった「50~60年代的なエッセンスのおいしいところをうまく盛り込んだ新しいポップス」というのがルーベッツの成功の秘訣だったという説もあるようです。 

▼Sugar Baby Love
https://www.youtube.com/watch?v=C9TGlhaZACs

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

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