自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(14)Make It With You

ソフト・ロックの原点

『Make It With You』は、ブレッドが1970年に発表した楽曲です。初めて聴いたのは、確か中学2年か3年のころ。聞いた瞬間、「爽やかな風が吹き抜ける暖かな地」をイメージしました。まさにアメリカ西海岸ですね。広島県の山奥で毎日を過ごす中学生にとっては、なんとなく憧れの対象を描いてくれる音像だったような気がします。

メロディアスな『Make It With You』はブレッドにとって初めての大ヒットで、やさしい旋律が静かに流れる全12曲で構成されるアルバム『On the Waters』に収録されています。メイジャー・セブンスコードを使用した典型的なアコースティック・ポップで、ビブラートをかけたヴォーカルが輝きます。1970年8月22日付のビルボードチャート1位を記録、全米ではミリオンセラー。そして1970年ビルボード・シングル年間チャート13位という素晴らしい記録を残しています。まさにソフト・ロックの原点となる楽曲といえるのではないでしょうか。

ご多分に漏れず、メンバー間のいざこざでわずか5年で解散

ブレッドは1968年にロサンゼルスで結成されました。当初のメンバーはデヴィッド・ゲイツ、ジェイムス・グリフィン、ロブ・ロイヤーの3人で、1969年にアルバム『Bread』でデビューしますが、売上げは芳しくありませんでした。しかし1970年、ドラマーのマイク・ボッツを新メンバーに加えて2枚目のアルバム『On The Waters』をリリースし、シングル『Make It With You』で全米No1を獲得するのです。

ブレッドはアルバムの曲の半分がソフトロックをめざすデヴィッド、半分がパンチの効いたロック・バンドを志向するジミーとロブが担当することでバランスをとっていました。ところが、稀代のメロディーメイカーであるデヴィッドの曲が売れることによって、バンドは「ソフトロック」のイメージが強くなっていき、1973年に解散しています。

その大きなきっかけになったといってもおかしくないのが、『Make It With You』のリリースでしょう。この曲がヒットすると、アンディ・ウィリアムスやアレサ・フランクリン、ダスティ・スプリングフィールドといった多くのミュージシャンがカバーするスタンダード曲にまで昇りつめてしまったのです。結局、まずロブが脱退し、そしてデヴィッドとジミーの方向性の違いがより顕著になることで、ブレッドはわずか5年で解散してしまいます。

▼Make It With You
https://www.youtube.com/watch?v=OudI2JPhEqQ

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

プロフィール