自分らしく
ふたりの“パブロ”が残したメッセージ
名画ゲルニカの記憶
何十年も前のことになりますが、仕事で訪れたスペインのマドリードでパブロ・ピカソの作品『ゲルニカ』を見た経験があります。今でも思い出すほど記憶にやきついた絵画でした。
当時はプラド美術館の別館に単独で展示されていました。にぎわう本館に比べると静かな場所で鑑賞客もまばらでした。大きな部屋に横幅約8メートルにおよぶ長大の『ゲルニカ』だけが飾られていました。
広く知られているように、ゲルニカはスペイン北部バスク地方の町で、1937年にドイツ空軍による爆撃を受けます。衝撃を受けたピカソは祖国の戦火を描き、反戦のシンボルと評される歴史的名画になります。
デフォルメされた戦争の惨状はモノトーンなのに現実感がせまり、その壁画の前で圧倒されたことが忘れられません。
平和を告げる鳥の歌
同じスペイン出身のもうひとりのパブロといえば、不世出のチェロ演奏家パブロ・カザルスを思いうかべます。
内戦で祖国を離れたカザルスは平和主義者としても知られました。とりわけ象徴的なのは、たびたび演奏していた故郷カタロニアの古い祝歌(キャロル)の『鳥の歌』です。
1971年にカザルスは国連平和賞を受賞して、国連で『鳥の歌』を演奏しました。曲の紹介でカザルスは、「空を飛ぶ鳥たちは、ピース、ピース、ピースと歌うのです」と語りました。このエピソードは伝説的に有名ですが、今でもネットでビデオを見ることができます。あらためてカザルスの肉声を聞くと、94歳の力強いスピーチには心を動かされます。
ピカソは1973年4月に亡くなり、それから半年後の10月にカザルスも永眠しました。意外にも、生前に交流はなかったようですが、平和の願いは共通だったはずです。ふたりのメッセージが色あせないことを願うばかりです。
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