乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント
らしく生きる
初めまして、大塚美絵子と申します。私は〈卵巣がん〉サバイバーで、現在、東京駅近くで主として『リンパ浮腫』の治療に使用する弾性着衣や包帯の専門店を営んでおります。自己紹介を兼ねて、病歴と今の仕事に就いたきっかけ、私なりの〈らしく生きる〉こととの関わりをお話します。
〈卵巣がん〉治療
2012年春頃から体の異変を感じましたが、更年期障害だろうと放置していました。しかし6月を過ぎると急激にお腹がふくらみ臨月のような大きさに! 大きな病院に駆け込んだところ、卵巣がんと診断されました。無治療なら余命半年という状態でしたが、「術前化学療法3回→手術→術後化学療法3回」という当時の標準治療のみで寛解、お陰様で治療終了後10年以上経ちました。
〈がん〉は治まったが、さまざまな不具合
〈卵巣がん〉治療は、抗がん剤と手術、病院での化学療法後はお薬の服用もない、とてもシンプルなプログラムで、「治療が終わって半年もすれば病気前と同じ生活に戻れる」と楽観していました。しかし、手脚の痺れや浮腫み、倦怠感などの症状が次から次へと出てきました。前の会社は退職したので職を探す必要がありましたが、フルタイム勤務は難く社会復帰は困難な状態。どうしたらよいかわからず、情報交換のためにイベントや患者会に顔を出すようになりました。
リンパ浮腫/弾性着衣との出会い
参加した患者会の女性患者の間で、しばしば『リンパ浮腫』が話題となっていました。特に仲間が困っていたのが、弾性着衣です。固くて分厚くて扱うのも大変、そのうえ、見た目は段ボールみたい。これを「一生身につけなければならない」と言われ、患者たちはうちのめされていていました。
しかも、弾性着衣は高いけれど、大切に扱おうにも主流のドイツ製品のタグが読めなくて多くの方がお困り。ドイツ語専攻だった私は、代わりにタグを読んだりするうちにドイツ製弾性着衣に興味がわきました。
実は私も弾性ストッキングで失敗しています。病院推薦ものが全く身体にあわなかったのです。しかし、旅行中ミュンヘンで自分にぴったりの弾性ストッキングをカウンセリング、試着の上購入できました。それで、「日本にもこういうお店を」と起業を思い立ったのです。
楽しい弾性着衣ワールド
起業を決意し学会や展示会に参加するようになって、弾性着衣はバリエーション豊富であることがわかりました。軽症用を中心に、ポップなお色やファッション性の高い柄、つけ心地良い生地のものがたくさんあったのです。しかも、保険適用対象。次第に〈らしく生きる〉ツールの弾性着衣を探すのが楽しくなってきました。
「ダサいので、がまん」は病院納入品しか見ていなかったときの思い込みに過ぎませんでした。「弾性着衣を身につけても、〈らしく生きる〉方法はたくさんある」というのが私の実感です。そして、「治療もオシャレも両立するツールと情報発信を」と意気込んでいます。
※写真について
オシャレなリンパ浮腫用スリーブ(医療機器)をつけてはしゃぐお客様
サポーター
- 大阪生まれ。中学以降は埼玉都民(※)。東京外大学ドイツ語科卒業後、3年ほどドイツ系銀行に勤務。退行後、英語・ドイツ語の文書翻訳フリーランス。
2006年からデロイト・トーマツ勤務し、IPO支援や内部統制支援、海外市場調査、企業不祥事調査などに従事。2012年、〈がん〉と診断された直後、同年7月末退職。
2017年、〈がん治療〉の後遺症であるリンパ浮腫の治療に用いる特殊な着衣やグッズを販売する小売店『リンパレッツ』を起業。グッズ販売で〈がんサバイバー〉のQOL向上を支援する他、復職・社会保障受給について情報発信や相談を行っている。
※埼玉都民
埼玉県民の一部で、埼玉県の住居から東京特別区へ通勤・通学している者。
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