自分らしく
グロリオサ
グロリオサ
夜
家に帰ったときは
エキゾチックな炎色
細い指に長い爪
私にむかってひらひら
差し出している
魔女の呪文みたいな
名前を持った花
朝
水をかえながら見つめれば
美しい朝焼け色
スリムなドレスを
くるりとひるがえして
ダンスをしている
ちょっとつんとした
ユリ科のおじょうさん
家だけではなく仕事場に花を飾ると気持ちがアップするので、通勤途中で小さな花屋さんをよくのぞきます。朝イチに寄るので、毎度のように店主が「もう少し時間が経てば市場からもっといろいろな種類の花が入ってくるんだけどね」と言います。でも、昨日売れなかった花のなかには意外に掘り出し物があります。
数日前の朝に訪れたとき、隅の方にひっそりと、しかし、存在感を、もって残っていたのがグロリオサでした。ゆりの仲間なのにカサブランカのように堂々と大きく咲いて香りを放つでもなく、乙女ゆりのように可憐なピンク色で仲間と寄り添って咲くでもなく、独特の茜色で思い切りおてんばに花びらを広げている姿が印象的です。
思わず買ったグロリオサは一枝でいくつも花がついており、まだつぼみも数輪あったので、咲いていくのが楽しみです。エキゾチックな色であちこちを向いているので、行儀のよい白いトルコキキョウを合わせて買いました。トルコキキョウも枝分かれしていて一本買えば賑やかになってお得です。お店を後にするときに「トルコキキョウの枝は、はさみで切らずにポキンと折った方がいいからね」とアドバイスをもらいました。
自分用の花なので、お金をそれほどかけられません。花屋さんには「この花は長持ちしますか?」とよく訊いています。暑い日が続いたころに小ぶりのひまわりを2輪買ったのですが、花屋さんが教えてくれたのは、台所用の漂白剤をごくごく少量花瓶に入れると、水のなかの茎が傷みにくいのだそうです。ハイターの泡スプレーを半押しでシュッと入れたところ、確かに効果的でした。
花は小さな洗面台の、鏡の前に飾ると、その姿が鏡に映って2倍楽しめます。ときどき水切りをしながら花に触れていると、慌ただしく追われている気持ちが少し落ち着きます。明日は月曜日、土日の間にグロリオサのつぼみが開いたかもしれません。パチッと音がしたのではないかしら。
サポーター
- 詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。
プロフィール