自分らしく
ボサノヴァは清涼剤
ボサノヴァの変わらぬ人気
ブラジルにはさまざまな音楽があり、サンバやボサノヴァが有名です。サンバといえば情熱的なリズムやダンスを思い浮かべますが、その対局をなすようにボサノヴァはささやくような歌声とゆったりとしたギター演奏が叙情的な音楽です。
どちらも、ブラジル音楽の伝統的なジャンルに思えます。しかし、実はボサノヴァは1950年代後半から1960年代中頃にかけてわずか数年の間に流行したムーブメントでした。今でもボサノヴァを継承する音楽家はいますが、ブラジルの多様化した音楽界では主流ではないみたいで、意外にもブラジル以外の国、米国や日本で根強い人気を維持しているのです。
ボサノヴァの心地よさは、都会的な忙しい生活には欠かせない一息つく清涼剤の趣があることです。代表曲といえば「イパネマの娘」ですね。一度ならずとも聴いたことがあるのではないでしょうか。通説ではボサノヴァ誕生の1曲といわれています。リオにある有名なリゾート地コパカバーナのイパネマ海岸を舞台に、見かけた少女を主人公にした曲で、アントニオ・カルロス・ジョビンとヴェニシウス・ヂ・モライスが書いた名作。世界的に有名なレコードは女性歌手アストラッド・ジルベルトが英語詩で歌ったもので、1964年に発売されて大ヒットしました。
歌手アストラッド・ジルベルトの安らぐ歌声
アストラッドにとって、その曲がプロ歌手として初めての録音でした。彼女は夫である歌手ジョアン・ジルベルトがアメリカでレコードを録音する際に同行しました。そのときの1曲が「イパネマの娘」。ジョアンはポルトガル語で歌い、アストラッドが英語で歌いました。「英語が得意でなかった夫の代わりと歌った」いう説があるようです。
彼女は何度かステージで歌ったことはありましたが、本格的なレコーディングは初めてでした。レコード会社はその録音から、ジョアンのパートを削除して、アストラッドの歌を残してシングルとして発売しました。結果として、歴史的な大ヒットを記録したのです。
その後2人は離婚しますが、アストラッドは米国で歌手として大成功します。皮肉なことに、ブラジル本国での評価は高くありません。専門的な評価は別にして、時代を経てもアストラッドの歌声は世界中で多くの人を魅了しています。ささやく歌声はときに心もとないのですが、おおらかで包み込まれるような暖かさがあります。彼女はボサノヴァだけでなくジャズやポップスも歌っていて、いずれの曲でもその魅力は変わりません。
アストラッド・ジルベルトの歌声には、ボサノヴァが生まれたビーチで味わう爽快感が漂います。忙しい日常の休息に、彼女の歌声を聴いてみてはいかがでしょうか。
サポーター
- 愛好するスムーズ・ジャズのブログを発信しています。
プロフィール
最新の記事
- 自分らしく2024年10月1日ふたりの“パブロ”が残したメッセージ
- 自分らしく2023年9月1日地下鉄の演奏風景
- 自分らしく2023年6月1日ブルースとブルーズ
- 自分らしく2023年3月1日5拍子で大ヒットしたジャズの名曲