自分らしく
駅前通り
駅前通り
むしむしとする
朝に
梅雨明けを待てない
セミが
ソロで鳴いている
太い声
通勤のために、毎朝毎晩、駅前通りの商店街を通っています。いろいろな看板が右側と左側に切れ目なく続いています。縦長に壁から飛び出していたり、横長にひさしの上にかかげられていたり。多くは長いことそこにあってベテランの顔をしていますが、たまに、真新しいのぼりが立てられたり、おしゃれに広いガラス窓に店の名前とメニューが描かれていたりもします。
ミヤハシ古書店、あい美容室、ジンギスカンGEN、一心堂整骨院…。ひらがなに片仮名、漢字にアルファベットと、統一されることもなく自由に名乗っています。片桐とうふ店、焼き肉味園、アーク薬局、アジア料理サードアイ、樽酒あおい、パンハウス麦畑、マツモト精肉店、M歯科、クリーニング Memory…。だいたいの用事はこの駅前通りですんでしまいそうです。
そしてこの商店街には、早起きの店と夜更かしの店があります。
朝通るときには、年配のご夫婦がカフェのテーブルを拭いて「モーニングやっています」のプレートをかけようとしています。早くからオープンするパン屋さんには、ガラス越しに焼き上がるパンをどんどん並べるエプロン姿が見えます。昔ながらの理容室では店の前に並べた紫陽花の鉢の間を丁寧に掃除しているご主人がいます。まだのれんがかかっていませんが、中から小豆を煮る匂いだけが漂ってくる和菓子屋さんも。
朝の道では、右や左の早起きの店から、応援されているような気分になりながら、足早に駅に向かいます。夜、遅目に帰るときには、夜更かしの店が2020年の年明けまでは元気に開いていました。ラーメン屋に、焼き肉屋に、イタリアン、焼き鳥、寿司屋に、インド料理屋。においはまさに多文化共生。私とすれ違って駅に向かう人々が、笑いながら楽しい時間の余韻をまとっていました。
今や料理店は早じまい、ほとんどが明かりを消してしんとしています。明かりがついていてもお客はみな帰ったあとで、店員さんが片付けをしていたり、最後のテイクアウトを店先に出したりしています。「都の要請を受け○月○日まで休業します」の張り紙をシャッターにひらりと止めている店もあります。すれ違う人の数はめっきり減ってしまいました。大好きだったもつ焼き屋さんが閉店になってしまいました。
夏はスタートしますが、夜更かしの店たちがまた元気に動き出すまでには、もうしばらくかかるのでしょうか。
サポーター
- 詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。
プロフィール