自分らしく
10月の帰り道
10月の帰り道
夕闇の中
昼の名残の
ゆるい空気を感じて
歩いていると
ときおり
きりっとした
夜の気体のかたまりと
すれちがう
それから
そのあいまをぬって
どこにあるのかわからない
キンモクセイの放つ
やわらかなメッセージが
幾度もやってくる
おつかれさん
おつかれさん
毎朝そこを通ることがとても楽しみな家があります。玄関脇のスペースはコンクリートなのですが、季節ごとにずらりと鉢が並んで芽を出し、ぐんぐん伸びて小さな林ができあがります。この夏は人間の背を越すばかりに成長した緑の葉の間からいったいどんな花が咲くのかと思っていたら、ハイビスカスのさらに大きいようなピンクの花が次々と咲きました。「何という花かしら?」と思っていると、そのうち、『タイタンビスカス』という花の名が書かれた札が下がりました。なるほど、巨人タイタンのように頑丈そうです。
10月に入ってすっかり花が終わっていて寂しかったタイタンビスカスですが、ちょっと気温が夏に戻ったこの2日間で、一輪の花がぱっと咲いていて、目を引きました。周りの塀には夏のなごりの空の色のような朝顔もぽつりぽつりと咲いています。
ところで我が家の出窓ではパクチーを3鉢並べて、夏中、収穫を食事に添えて楽しんでいましたが、もうどれもほっそりと背が伸び白い小さな花まで咲いて、「今年はおしまいかな」と思っていました。しかし、一輪咲いたタイタンビスカスを見た日のことです。数日前に土のなかで目覚めたらしく、ひょろりと芽を出していた双葉が急に立派なパクチーに成長していました。
昨日は、少し混み合った朝のJR山手線で、あまり聞いたことのない車内アナウンスが流れてきました。「次は新宿、新宿です。本日日差しは温かいのですが、朝夕は風が涼しく感じます。お手持ちの羽織りものなど、網棚にお忘れではありませんか? お手回り品のご確認をお願いします。本日この後も良い一日をお過ごしください」気づけば確かに、腕に上着をかけている人や、肩にカーディガンをかけている人の姿が目に入ってきます。
夏と秋の両方が、出たり引っ込んだりしながら季節が移っていくこの時期に、小さなサプライズがいろいろありました。
サポーター
- 詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。
プロフィール