自分らしく

11月のプール

11月のプール

引き上げられた
コースロープが
疲れたへびのように
くたばっていて
水はみどりいろ

どこからかゆるい波紋が
休みなくひろがり

とどまって浮いている
落ち葉の下で
秋の時間は
ゆらゆらとすぎていきます

中学校に勤めているときに、水泳部の顧問をしていたことがありました。夏の初めの部活動では、秋冬とためておいた水を一度空にして、プール全体を磨くという楽しい作業をしていました。緑色になった壁や底をデッキブラシで磨いて流して、水泳部員たちは大喜び。数日かけて水がたまると、学校の誰よりも先にプールに入れることを誇りに、冷たさをものともせず泳いでいました。

そして体育でも、待ちに待った最初のプールの授業。まだ冷たすぎる水に、ありったけの声で悲鳴を上げて入っていく中学生。プールを見下ろす校舎で授業を受けている生徒たちも、思わず外に目をやっていました。舞い上がるしぶきのなかで、子どもたちの夏が始まったという気がしたものです。

そんな騒がしさやキラキラした日差しがあふれている季節はあっという間で、それ以外ほとんどの期間、プールは黙り込んでいます。誰かが誤って入り込まないように、しっかりと鍵がかけられて忘れられているかのようです。

でも、時々面白い光景を見つけることがあります。緑色の藻が発生したプールの水を、科学部のメンバーと先生が採取していました。小さな生物がいろいろ見つかるのだそうです。それから、水面に氷が張ったときには、誰かが氷を割ろうとして投げるのか、古いテニスボールが2、3個乗っていたりしました。そして氷が溶けたころに、なんと数羽の水鳥が気持ちよさそうに泳いでいるのです。そしていつの間にかいなくなっています。渡り鳥が羽を休めに来ているという話です。

プールは今、沈黙の季節。来年こそ、子どもたちがのびのびと大きな声を出してプールに入ることのできる夏になりますように。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・舞踊学専攻教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール