自分らしく

スキャットは輝いている

歌詞を忘れて生まれた「スキャット」

歌の歌詞が思い出せないとき、おもわず”ラララ”や”ダバダバダ”とつぶやいて、メロディをつなぐことがあります。こんなふうに歌詞なしのフレーズで歌うことを「スキャット」といいます。ジャズの世界でスキャットは、楽器のアドリブ演奏に匹敵する、技能に長けた歌手ならではの唱法です。

スキャットをはじめたのは、トランペット奏者のサッチモことルイ・アームストロングといわれています。90年以上も前ですが、歌手でもあったサッチモはレコーディングの最中、譜面を落として歌詞が出なくなり、思いつくままのフレーズで歌いつなぎました。その歌い方がスキャットと呼ばれて、サッチモの十八番になりました。トランペットの名手だからこそ、楽器を歌声で表現することができたのでしょう。

スキャットは歌手の腕の見せどころといえます。偉大なジャズ歌手、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンは、テクニックを駆使したスキャットで数々の名唱を残しています。

スキャットの名曲

歌詞のないスキャットでも、ジャンルを問わず印象的な名曲があります。クロード・ルルーシュ監督のフランス映画『男と女』のテーマ曲、”ダバダバダ”のフレーズはあまりにも有名です。『浜辺のボッサ』は歌詞のあるボサノバの名曲ですが、女性歌手アストラッド・ジルベルトは”バーバダーバダー”とスキャットだけで歌いました。

”ラララ”や”ダバダバダ”、”ルルル”に”シャララ”、意味のないフレーズですが歌詞以上に記憶に焼きつきます。「シャララはいまでも輝いている」と歌ったのはカーペンターズの『イエスタデイ・ワンス・モア』でした。

ちなみに、楽器演奏を肉声で再現したのがスキャットなら、現代のボイス・パーカッションやヒューマン・ビートボックスと呼ばれるパフォーマンスは、楽器の口まねを超えて究極の域に達しています。多彩な発声を使い、ドラムやパーカッションひいてはリズムマシンまで本物さながらに再現する多くのアーティストが活躍しています。

サッチモが生きていたら、驚きで声も出ないかもしれませんね。

サポーター

a. ユージ
a. ユージ
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