自分らしく

〈絵本は心のお薬 〉(3)『ようちえんいやや』

絵本は子どものために書かれたものですが、大人にもいいものです。心に響いたり、深い気づきがあったり、忘れていた思い出がよみがえったり…。大人の心に効く絵本を、絵本専門士で絵本セラピストの大江美保子がお届けします。

「ようちえんいやや〜」と泣いているこどもたち。その理由はそれぞれ

いろんなお子さんが「ようちえん いやや〜」と泣いています。それぞれ、いろんな理由があります。

園長先生に「おはよう」の挨拶をするのがいや
苺が好きなのに桃組だからいや
合奏のとき、カスタネットだったからいや
おかえりのとき、歌を歌うのがいや
etc

でも、「なんでないているのかな?」と寄り添って話をしてみると、本当の本当の気持ちは共通していて、「おかあさんと、一日、一緒にいたいだけなんだ」ということがわかったというお話です。

自分の気持ちを言葉にするのは難しいです。でも、それは子どもだけでなく、大人も同じでしょう。なんともいえないモヤモヤとした気持ちでいっぱいになるときは誰にでもあります。

そんなとき、「いやや〜」と叫ぶことは一種の情動発散(ストレス発散)になります。それに対して、その行為を否定するのではなく、「どうして泣いているの?」と寄り添う周りの人の存在と言葉。そこで初めて、「お母さんと一日、一緒にいたい」という本当の気持ちが明確になります。

情動発散して、寄り添ってもらって、本当に気持ちをいえたら、子どもたちは笑顔になって園庭で元気に遊んでいます。状況は全く変わっていないのに…。絵本って、有能なカウンセリングですね。

効能

「いやや〜」と思っていることはありませんか? 「いやや〜」と言葉にしてみませんか? そして、そんな自分に寄り添って、「何が、嫌なんだろう?」「どうして、嫌なんだろう?」と問いかけてみてください。本当の自分の気持ちがわかるかもしれません。

「嫌だ!」という一見、マイナスな感情ですが、その裏には「こうなりたい!」、「こうありたい!」というプラスの願望が隠れています。それが分かると、園児たちのようにたとえ状況が変わらなくても気持ちが変化するのでしょうね。自分で自分をセルフ・カウンセリングできるといいですね。

▼『ようちえんいやや』
作・絵:長谷川義史  発売:童心社
https://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494007585

サポーター

大江美保子
大江美保子
絵本セラピスト®︎/心理カウンセラー
プログラマー、シナリオライターなどを経て、3人の子育て中に絵本の読み聞かせのボランティアを始める。
2015年6月、乳がんの宣告を受け絶望のどん底に突き落とされる。そのとき、何気なく手にした一冊の絵本『でこちゃん』(つちだのぶこ作/絵 PHP出版)から深い「気づき」を受ける。絵本が大人に与える力に感銘し、その体験から『絵本セラピスト®️』となり活動開始。
病院や患者の会、子育てサロン、カフェにて大人の人に絵本を届けるセミナーを毎月開催。
エッセー風の絵本紹介ブログ、メルマガを毎日更新している。

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