自分らしく
〈洋楽ポップス回顧録〉(15)Brandy〜You’re a Fine Girl〜
『Alone Again』とトップの座を争うほどの大ヒット
『Brandy〜You’re a Fine Girl〜』は、1972年に4人組ロック・グループLooking Glassが発表した曲です。メンバーはElliot Lurie(g)、Larry Gonsky(key)、Piet Sweval(b)、Jeff Grob(ds)。ただドラマーがなかなか定まらず、やっとJeffに決まったものの2ndアルバムではJoe Dudeに変わっています。
とはいえ彼らの演奏力はかなり高度で、CBS/Columbiaの社長であるClive DavisがLooking Glassを気に入り契約に至ります。そして1972年の春、グループ名をタイトルにしたデビューアルバムが発売されますが、売れ行きは伸び悩んでいました。Jeff Beck Groupの全米ツアーのスペシャル・ゲストに抜擢されるほどの実力をもっていたバンドにもかかわらずです。
しかし、ひょんなことからLooking Glassの前に輝かしい道が開きます。ある小さなラジオ局がアルバムからピックアップして『Brandy』を流したところリクエストの電話が殺到し、局の交換台の電気がクリスマス・ツリーのように点滅し続けたのです。それがやがて全米に広がり、大ヒットへとつながりました。因みに同時代のヒット曲といえばGilbert O’Sullivanの『Alone Again』がありますが、『Brandy』はその名曲と激しいトップ争いを演じ、1週だけですが1位になっています。
同じ街出身の3人がタイトルを譲り合う
Elliot Lurieが『Brandy』を作詞・作曲した時点で、UKチャートで12位まで上がった曲が同名の『Brandy』でした。Scott EnglishとRichard Kerrの共同で録音された曲ですが、アメリカでは全く売れませんでした。それでもLurieはその曲と混同されないよう、タイトルを『Brandy〜You’re a Fine Girl〜』と設定しています。彼もScott Englishと同じブルックリンの出身ですから、5歳年上の同郷の先輩に敬意を表したのかもしれません。
そのころのニューヨークで、音楽の仕事であれば何でも引き受けながらも、まったく売れていなかったのが、Lurieの5歳年上のBarry Manilowでした。1974年、彼はClive DavisからScott Englishの『Brandy』をカヴァーするよう勧められますが、その際にタイトルを『Mandy』に変えることを申し出ます。Looking Glassがその2年前に同名異曲で全米1位に輝いていたので混同されたくないというのが理由だったとされています。
しかし、実は同名異曲を出すのを遠慮したBarry Manilow自身も、ブルックリンの出身なのでした。「同じ街で生まれ育ったミュージシャンが、お互いリスペクトして曲のタイトルを譲り合ったのではないか」という、ちょっといいお話です。
▼Brandy〜You’re a Fine Girl〜
https://music.youtube.com/watch?v=nBwBUXSw90o
サポーター
- 紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。
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