自分らしく

〈絵本は心のお薬〉(11)『しろさんとちびねこ』

絵本は子どものために書かれたものですが、大人にもいいものです。心に響いたり、深い気づきがあったり、忘れていた思い出がよみがえったり…。大人の心に効く絵本を、絵本専門士で絵本セラピストの大江美保子がお届けします。

繰り返し繰り返される営み

一人気ままに暮らしていた白猫(しろさん)のところに黒い子猫(ちびねこ)がやってきます。白猫(しろさん)は、黒い子猫(ちびねこ)に、賢い猫としての振る舞いを教えます。それは、トイレの仕方、食べ方、遊び方などなど、猫としての基本的な生活のあり方でした。

やがて黒い子猫(ちびねこ)は大きくなり、小さな猫から立派な黒猫になっていきます。反対に、白猫(しろさん)は歳をとり、だんだん動かなくなり、やがていなくなってしまいます。悲しみにくれる黒猫。

でも、そんな黒猫のもとへ、ある日、小さな白猫がやってきます。今ではもう、立派な黒猫になった元ちびねこは、やってきたばかりの小さな白猫に、賢い猫としての振る舞いを教えていきます。かつて白猫(しろさん)に教えられたとおり、一緒にやるという方法で…。

白と黒の猫が大きくなったり小さくなったり、現れたり、やがていなくなったりしていくなか、白猫と黒猫は大切なものをバトンのように手渡し、伝えていくお話です。

効能

白と黒を基調としたシンプルな絵、そして短い文章で描くストーリーは、「果たして、私は賢い人間としての生き方をしているのだろうか?」「残していくものたちと一緒に、賢い人間としてやっていき、残されていく者たちへ伝えているだろうか?」と我が身を顧みるきっかけになります。

賢い人間としての生き方とは、そんなに難しいものではない。でも、伝えなれければ伝わらない…私はそんなことを感じました。皆さんはこの絵本を読んでどう感じられるでしょうか? ちょっと立ち止まり、これからの生き方、これまでの生き方を考える効能がある絵本です。

▼『しろさんとちびねこ』
作:エリシャ・クーパー 訳:椎名かおる 出版:あすなろ書房
http://www.asunaroshobo.co.jp/home/search/info.php?isbn=9784751528297

サポーター

大江美保子
大江美保子
絵本セラピスト®︎/心理カウンセラー
プログラマー、シナリオライターなどを経て、3人の子育て中に絵本の読み聞かせのボランティアを始める。
2015年6月、乳がんの宣告を受け絶望のどん底に突き落とされる。そのとき、何気なく手にした一冊の絵本『でこちゃん』(つちだのぶこ作/絵 PHP出版)から深い「気づき」を受ける。絵本が大人に与える力に感銘し、その体験から『絵本セラピスト®️』となり活動開始。
病院や患者の会、子育てサロン、カフェにて大人の人に絵本を届けるセミナーを毎月開催。
エッセー風の絵本紹介ブログ、メルマガを毎日更新している。

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