〈がん〉になったおかげで「楽しかったこと」をお話ししましょう。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けたので、ウィッグや帽子などいろいろ楽しめたんです。

ウィッグをオーダー

化学療法で毛が抜けることを想定したので、ウィッグを調達することを考えました。当時、肩より長いロングヘアで、それが抜けると面倒だろうと考え、短く切ることにしました。そして、医療用ウィッグについてネットでいろいろ検索しているうちに、自分の髪でウィッグをつくることができるのを知りました。治療に入る前に根本近くまで切って、その髪を自分の頭に合わせたネットのウィッグに仕立てるのです。自分の髪でウィッグをつくるなんて、なかなかできない体験ですよね。ちょっと面白くなりました。

ウィッグ専門サロンに連絡・予約して、いよいよ相談です。自分の髪でフルオーダーのウィッグなので、結構なお値段! ちょっと悩みましたが、「どうせ一生に一度の経験だから」と、思い切ってつくることに決めました。今となっては無駄遣いだったかなぁ…と思うけれど、そのときは「死ぬかもしれない」と思っていたので、結構気前よくお金を使っていましたね。ほかにもたくさん無駄遣いしました(笑)。

「髪を切る=ウィッグの材料を採取する」日を予約して、当日ドキドキしながら望みます。「今」の状態に近いスタイルにするため、本当に根元からザクザク切るのです。終わったら、「五分刈り」状態! そして、切られた自分の髪は数日前にヘアサロンでケアしてもらっていたせいもあって、結構きれいでした。

鏡に映るくりくり坊主の自分の姿、嫌いではありませんでしたね。その髪を預けて約2か月、でき上がったウィッグは以前の私の髪よりふさふさした感じに仕上がり、付けるとちょっと若返る感じで嬉しかったです。

毛が抜ける体験

化学療法が始まって2週間目くらいから頭皮がなんとなく痛くなって、ブラッシングやシャンプーの際に抜け始めます。お風呂で引っ張ると面白いように抜けます。枕に抜け毛がたくさんついたりすると聞いていたので、「いっそきれいに抜いてしまえ!」と毎日お風呂で引っこ抜いて、3〜4日でつるつる坊主になりました。

今思えば、乱暴なことをしましたね。それで、つるつる坊主の頭で写真撮って、友達に見せたりしました。「エロい」と褒めて(?)くれる人もいれば、憐れむ人もいましたが、本人は結構楽しんでいたのです。

いろいろなスタイル

前述のとおり、地毛のウィッグはでき上がりまで2か月近くかかったので、それまでに使うウィッグが必要でした。数年前に脳腫瘍の手術をした知り合いが、「買ったけど結局使わなかったので」とくださったものを少しカットして、整えて使いました。

それからネットでウィッグを検索して、金髪や赤毛のものなど、安いおしゃれウィッグもいくつか買いました。その日の気分や服装、行く場所などに合わせていろいろ付け替えるのは楽しく、周りの人も喜んでくれたし、抗がん剤の副作用で辛いなか、気晴らしになりました。

でも、夏になると頭皮に汗をかくようになり、ウィッグが不快になり始めます。「髪の毛がそういうものも吸収・発散してくれていたのだ」と実感しました。仕事で人に会うときは何とか我慢してウィッグを使い、家にいるときは柔らかいコットンのキャップをかぶっていました。コットンのスカーフでつくった帽子を使ったりもしました。探せば、本当にいろいろあるのですね。

私の癌は「HER2+」でしたので、最初に抗がん剤のカクテル点滴を4回とドセタキセル点滴を1回(副作用が耐えられないほどひどかったので、1回でやめてもらいました)受けて、その後ハーセプチンに切り換えました。ハーセプチンは分子標的薬で髪や爪の細胞を攻撃しないので、だんだん毛が生えてきます。そうなると、ウィッグはチクチクして着け心地が悪くなり、五分刈り状態ぐらいまで伸びた時点でウィッグを使わなくなりました。幸い私の髪は軽いウェーブがあり、頭に沿って伸びたので、「超ベリーショート」のちょっとモードなおばさん風だったと思います。それも楽しかったです。

白髪染めから解放される

私は30代のころから白髪が出始め、治療前まではずっと染めていたのですが、毛染めして2週間くらいで根本が白い毛が見え始めるのが嫌で、いつか坊主か超短髪にして染めるのをやめようと考えていました。だから、一度毛が抜けてしまったのはちょうどよいチャンスと考え、それから染めていません。

もともと髪の色が茶色くて、だんだん色が抜けて金髪のようになってから白髪になるタイプなので、今はお洒落でメッシュのカラリングをしているように見てくださる方もあります。白髪染めから解放されたのも、「良かったこと」のひとつですね。