日本人の精神文化に深く関わる桜

「さくら」の語源は「さなえ」などのように田植えに関係する言葉に「さ」が付くとされる説が多く、田の神様が天から降りてきて、宿る所「鞍」が、「さくら」であるというものがあります。田植えのころ、ちょうど花を咲かせる桜は、田植えのタイミングを知らせる神様の降臨だったのかもしれません。

桜は8世紀の『日本書紀』には登場していて、そのころから花を観賞する文化があったようです。平安時代には貴族が富と権力の象徴として、桜の木を増やしていきます。その後、戦国時代から桃山時代になると、それまでの桜の花の美さを愛でる文化から、花の散り様を愛でる精神文化へと変わっていったと言われています。

こうしてみると、桜の花は日本人の精神文化に深く関わっていることがよく分かりますね。現代の私たちも桜前線を気にしながら、桜の開花を待ち望み、開花の時期にはお花見を楽しみ、数日で散っていく花を惜しみながら、季節の移ろいを感じます。

桜の草木染

桜の花が散って、「あ~あ」と思ってはいけません。桜には花だけではなく、その幹、枝、葉に力が宿っているのです。それは草木染でわかります。

私が初めて草木染に挑戦したときのことです。ネットの情報では「花が咲く前の枝に色素が詰まっていて、その枝を刻んで煮出すと、綺麗な色が出る」と書いてありました。しかし私が使った桜の枝は、公園の桜並木で拾った台風で折れた枝や、花の仕事で使った、花が咲き誇った後の枝。枝を水で煮出していると、初めは茶色の液が出てきました。それを捨てて何度か繰り返した方が良いとは聞いていたのですが、3回煮出した後の液に、ナスの漬物の変色を防ぐミョウバンを混ぜて、染めてみたんです。残念ながら、桜色とは程遠いベージュでした。

そこで、5回目の液に重曹を入れてみました。液が急に赤くなって染めてみると、綺麗なサーモンピンクです。神田川近くの染の匠のお話しでは、10回くらいまで煮出しを続けるとのことでしたので、私も、「煮出しては液を取り出し、新しい水を入れてまた煮出す」という作業を10回まで続行。9回目、10回目の液では、少し青みがかった綺麗なピンクに染まるようになりました。桜の枝のなかにどれだけの色素が含まれているのでしょう! その隠れた力に、驚かされます。桜の力は、私たち人間に多くのものを与えてくれています。