自分らしく
〈絵本は心のお薬 〉(1)『ママはかいぞく』
絵本は子どものために書かれたものですが、大人にもいいものです。心に響いたり、深い気づきがあったり、忘れていた思い出がよみがえったり…。大人の心に効く絵本を、絵本セラピストの大江美保子がお届けします。今日は、乳がんのお母さんの心のお薬絵本です。
ぼくのママは海賊。船の名前は『かになんてへっちゃら号』
ママは勇敢に、おばけのように大きい蟹と戦います。
でも、海に出るのはとても大変みたいだ。
船に酔うのか、帰ってきたらベッドに横になっていることが多いし、
ご飯も食べられず吐いていることも多い。
そんなとき、ぼくは、コップに水を入れて
海賊風に「乾杯!!』してママを元気づける。
海賊のママと僕のお話です。しかし、この絵本、実はもう一つの隠されたストーリーがあります。
海賊なのに、皆、白衣を着ていたり、腰には刀ではなく注射器だったり、メス、聴診器を身につけています。船の名前は『蟹なんてへっちゃら号』。フランス語で蟹はcrabe、英語で蟹はcancerどちらも、病気の『がん』も意味します。お分かりでしょうか? そう…これは、〈乳がん〉のママとぼくとの話でもあるのです。
効能
病気のお話は、暗く重くなりがちですが、この絵本は辛い現実をファンタジックに表現し、明るく楽しい絵で描かれています。
病気になったママが、病気になったことは悲しく辛いだけの物ではないことを小さいお子さんに分かりやすく、希望をもって伝えている絵本です。そして、この絵本、作者の実体験から描かています。だからなのでしょう、ファンタジックでありながら、メッセージが心に響く絵本となっています。
▼『ママはかいぞく』
文:カリーヌ・シュリュグ 絵:レミ・サイヤール 訳:やまもとともこ 発売:光文社
https://shinsho.kobunsha.com/n/n55dc32b14229
サポーター
- 絵本セラピスト®︎/心理カウンセラー
プログラマー、シナリオライターなどを経て、3人の子育て中に絵本の読み聞かせのボランティアを始める。
2015年6月、乳がんの宣告を受け絶望のどん底に突き落とされる。そのとき、何気なく手にした一冊の絵本『でこちゃん』(つちだのぶこ作/絵 PHP出版)から深い「気づき」を受ける。絵本が大人に与える力に感銘し、その体験から『絵本セラピスト®️』となり活動開始。
病院や患者の会、子育てサロン、カフェにて大人の人に絵本を届けるセミナーを毎月開催。
エッセー風の絵本紹介ブログ、メルマガを毎日更新している。
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