インタビュー

患者さんに聞く

〈がん〉に対して焦らず諦めず、 一日一日を大切に丁寧に生きる

大友明子

大友明子さん

メンタル・スパ代表/乳がんコンシェルジェ
2010年、生まれて初めて受けた〈がん〉検診のマンモグラフィーで左乳房に〈がん〉が見つかり、手術・抗がん剤治療・ホルモン療法を実施。9年目の定期検査(2019年)で反対側にも〈乳がん〉が見つかる。手術後、抗がん剤治療・放射線治療を受け、現在はホルモン療法中。罹患後6年間、認定NPO法人キャンサーネットジャパンにて、乳がん体験者コーディネーター(BEC)養成講座・〈男性乳がん〉を担当。2020年6月に退職し、現在はフリーで学校や企業で〈がん〉啓発活動と、〈乳がん〉関連のセミナー司会進行、ピアサポーター養成のための講師などで活動中。

▼主治医に言うほどではないけど、なんかモヤモヤ~な方集まりませんか?の会
https://www.facebook.com/moyamoyanokai

▼メンタル・スパ
https://moyamoyanokai.jimdofree.com

▼ユメちゃんの乳がんバイブル
https://ameblo.jp/meimei-koyagi/

〈がん〉罹患のことを話すかどうかは、その人の置かれている状況や環境によるのでは

〈ら・し・く〉
まずは、大友さんのお仕事の履歴を伺いたいと思います。もともと、どんな仕事をされていたのでしょうか?
大友
新卒から23年間、日本航空で客室乗務員として働いていました。そして2010年、早期退職制度で退職したばかりのころ、生まれて初めて〈がん検診〉を受けたんです。そのとき、左側の〈乳がん〉が発見されました。マンモグラフィ検査だったので、早期発見につながったのだと思います。今では「受診して本当によかった」と痛感しています。

また、現在だと“治療と仕事の両立”というスタイルが定着しつつありますが、そのころは、そんな環境ではありませんでした。ですから、たまたま退職していてよかったとも思います。

〈ら・し・く〉
〈がん〉が見つかったあと、どのような治療をされましたか?
大友
2010年の年末に見つかり、治療はその直後からスタート、最初に全摘手術を受けました。手術後に自分の胸を確認して、「乳房全摘手術って、こんなに乳房をえぐり取られるんだ」と、さすがにショックを受けました。リンパ節転移もあったため、その後は抗がん剤治療、さらにホルモン治療を受けています。抗がん剤治療は強い薬でしたので、副作用がかなりきつかったですね。メンタルもダメージを受けて、精神科も受診しました。さらに、2019年に前回とは逆側に〈がん〉が再度発症し、温存手術、放射線治療を受けました。そういうわけで、ホルモン治療は今も続けています。

〈ら・し・く〉
自分が〈がん〉に罹患したことを家族や周りの人たちに伝えるのは難しいと思うのですが、
大友さんの場合はどうされていましたか?
大友
1回目の発症時は子どもがまだ小さく(4歳と9歳)、〈がん〉のことが理解できないと思ったので、「胸におできができたから、手術して取ります」と伝えました。子どもたちにとっては、がんもおできもよくわからなかったので、特にショックはなかったと言っています。ただ帰ってきたら胸がなくなっていたのには驚いたみたいでした。

私は、1回目のときには親にも話しましたが、親や会社にも話さない」という人もいらっしゃいます。話すかどうかは、その人の置かれている状況や環境によるのではないでしょうか。話した方がメリットのある場合は、話した方がいいですしね。たとえばママ友に何か助けてもらうような必要がある場合は、お話して助けてもらうとか。

ありとあらゆるセミナーや勉強会に参加し、
同じ体験をしてきた人同士が話せる独自の会をスタート

〈ら・し・く〉
〈がん〉が見つかったとき、どんな気持ちでしたか? その後の変化についても併せてお聞かせください。
大友
〈がん〉告知をされた翌日から、なんとブログを書き始めました。がっかりしたし、どうしていいかわからなくて、自分の気持ちを吐き出して、楽になりたかったのかもしれません。『ユメちゃんの乳がんバイブル』(※)という名前にしたのは、できるだけ自分のイメージから遠そうな名前にして現実から離れたかったという気持ちでした。ちょうどそのころ転職活動をしていて、〈乳がん〉発症がわかり、内定をいただいていた会社にお断わりの連絡をした悲しい経験もあります。

そして、とにかくネットを検索しました。〈がん〉について自分が何も知らないということに苛立ちを覚え、とにかくありとあらゆるセミナーや勉強会にも行きました。勉強の一環で、乳がん学会にも参加したりしました。行きつくして思ったのは、自分の気持ちを「話す場所がない」ということ。情報を得たり、話を聞くことはできても、自分が疑問に思ったことや、理解したことを咀嚼したり…こうしたちょっとしたことを同じ体験をしてきた人同士が話せる場をつくりたいという気持ちが出てきたんです。そこでブログを通じて仲良くなった友人とともに、2013年春、『主治医に言うほどではないけど、なんかモヤモヤ~な方集まりませんか?の会』をスタートしました。

※ユメちゃんの乳がんバイブル
https://ameblo.jp/meimei-koyagi/
(編集部注)

〈ら・し・く〉
ずいぶん活動的でしたね。
『主治医に言うほどではないけど、なんかモヤモヤ~な方集まりませんか?の会』(※)について、
もう少し教えていただけますか。
大友
定期的に会を開催し、年会費などはありませんが、初回は2,000円、2回目以降は1,500円の会費をいただきます。4時間ほどグループにわかれて、心のなかに溜まったモヤモヤしていることを話すという内容ですね。患者会というより、ワークショップに近い形。先生をゲストスピーカーとしてお呼びして講義をしてもらう会もあります。

※主治医に言うほどではないけど、なんかモヤモヤ~な方集まりませんか?の会
https://moyamoyanokai.jimdofree.com/
(編集部注)
https://www.facebook.com/moyamoyanokai
(編集部注)

「正しい情報や知識を仕入れたい」という思いで、
乳がん体験コーディネーターの講座を受講

〈ら・し・く〉
大友さんとは『キャンサーネットジャパン』(※)という団体のBEC(乳がん体験コーディネーター)(※)認定を通じて知り合いました。大友さんがBEC認定を取得しようと思ったきっかけはなんでしょうか?
大友
最初に〈がん〉が発症したときに、ありとあらゆるセミナーや勉強会に参加しました。自分の知識がないことで、先生と対等に話せないことが許せなくて。とにかく正しい情報や知識を仕入れたいとネット検索をしているときに、BECという講座があることを知り、受講しました。

その後、『キャンサーネットジャパン』が運営していたOCT(Over the Cancer Together) というイベントの第一回に参加した縁もあり、『キャンサーネットジャパン』の事務局で働くようになりました。最初の罹患から2年くらい経ったころです。ここには2013年から2020年まで7年近くお世話になり、途中でBECの担当も受けもつことになりました。

2回目の〈乳がん〉治療が始まったら、これが思っていた以上に辛くて仕事を休まざるを得なくなり、結局、辞めて治療に専念することにしました。現在は、プロジェクトごとにお手伝いさせてもらっています。今後は、自分の体験をベースとして、〈乳がん〉にもっと注力した活動をしていけたらと思っています。

※認定NPO法人キャンサーネットジャパン
https://www.cancernet.jp/
(編集部注)

※BEC(乳がん体験コーディネーター)
https://www.cancernet.jp/training/bec
(編集部注)

知識は力。今後も〈乳がん〉のスペシャリストとして、
大人の〈がん〉教育などの推進の力を入れたい

〈ら・し・く〉
自分が辛いとき、どんなサポートや支援を受けましたか? そして、何が助かったと感じましたか?
大友
自分の場合は、1回目の〈がん〉発症のときはブログに助けられました。そこに書き込むことや、そこで知り合った友人や仲間ができたことが大きかったと思います。書くことは、ストレス発散でもありました。困ったことや質問は、主治医に聞きまくりました。

また、〈がん〉についての勉強も結構したので、自信にもなりました。医師としっかりコミュニケーションを取るためにも、情報や知識を得ることは必要なので、そういう人脈も大事ですね。2回目の〈がん〉発症のときは、情報も知識も以前よりあったので、慌てずにすみました。「知識は力」ですね。

〈ら・し・く〉
今はどんな気持ちで毎日、過ごされていますか? 発症前の自分と比べてどうでしょうか? 
日々の過ごし方など変わったこともあったら、お教えください。
大友
〈がん〉に罹患する前は大きな病気になったことがなかったので、病気そのものや患者の気持ちについて考えもつきませんでした。「死」ということを意識もしたことがなかったのに、結構考えるようになりましたね。また、道端の草花や空の色の移り変わりに目がいくようになり、その美しさに気づくようになったことが変わったのだと思います。それまでは仕事と家の往復で、さっさと通勤して周りに目を配る余裕もなかったのでしょうね。

今後は、〈乳がん〉により注力して〈乳がん〉のスペシャリストとして活動していきたいと思っています。以前コーチングの資格も取得していたので、それを生かして〈がん〉の教育、特に大人の〈がん〉教育などを推進できたらと考えています。

〈ら・し・く〉
最後に、現在、〈がん〉治療をされている方、治療後でも悩んでいらっしゃる方などに一言、メッセージをお願いします。
大友
「今、辛くても、この状態が続くわけでない」「医療は日々進歩しているから、生きていれば希望が生まれる」ということでしょうか。だから、〈がん〉に対しては焦らず諦めず、そして、一日一日を大切に丁寧に生きていくことを、自分でも心がけています。

インタビュー掲載日:2021年8月17日


今回のインタビューでは、〈がん〉発症が明らかになった直後からのブログスタート、モヤモヤの会の設立、2回のがん発症・治療を通しての活動続行、さらには〈がん〉教育をはじめとする今後の積極的な抱負など、大友さんのエネルギッシュな言葉を心強く感じました。ありがとうございました。