自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉 (5)Stumblin’ in

グラムロッカー二人のメロウなデュエット

「グラムロック」「メロウ」…なつかしい言葉ですねえ〜。70年代は頻繁に使われていましたが、今では”死語”に近いといってもおかしくありません。

デヴィッド・ボウイとかT. Rexなどの活躍で生まれた「グラムロック」は、1970年代初期から後半にかけてイギリスで大流行した音楽のジャンル。それとはまったく違う音楽スタイルの「AOR」(Adult-Oriented Rock)を形容する際によく使われた言葉が「メロウ」です。

今回、取り上げる1979年発売の『Stumblin’ in』は、そんな対照的な二つのスタイルを体現するふたりのデュエット曲です。女性は、『キャン・ザ・キャン』(Can the Can)や『ワイルド・ワン』(The Wild One)のヒット曲で有名なあのスージー・クアトロ。そして、気になるお相手が『アリスは恋人』(Living Next Door To Alice)を歌ったSmokieのクリス・ノーマンです。

意外な曲調…ところが、全米4位の大ヒット

グラムロッカーとして70年代の音楽界を走り続けた二人のデュエットとなると、「ド派手なコスチュームと爆音」を思い浮かべる人が多かったでしょうが、実際は軽快なポップスを楽しげに歌う二人でした。スージーに至ってはレザーのジャンプ・スーツから清楚なスカート姿にイメチェンし、自然体で肩の力を抜いて歌っているところがなんともチャーミングな感じです。

覚えやすいメロディー、8ビートの心地よいリズム…そんな王道をいくポップスがリスナーの心を惹きつけないわけがありません。なんと”全米売上げ4位“という見事な記録を打ち立てたのです。クリスとスージーのヒット曲の作者であり、プロデューサーであったマイク・チャップマンとニッキー・チンの力も大きかったわけですが、軽快なポップスには似合わない二人の声質も見事なスパイスになって多くの人を惹きつけたのではないかと思われます。

▼Stumblin’ in
https://music.youtube.com/watch?v=dUWjS74Qofw

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

プロフィール