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〈近畿圏枝毛線巡礼〉(12)近畿日本鉄道 道明寺(どうみょうじ)線

1898年開通の近鉄で最も古い路線
『道明寺線』は、近畿日本鉄道『南大阪線』の『道明寺駅』から分かれてJR西日本の『柏原(かしわら)駅』へ向かう2kmほどの短い路線です。道明寺駅の端に停まっている2輛編成の短い電車に乗りましょう。駅を発車するとしばらく川に沿って走り、大和川の鉄橋を渡ると『柏原南口駅』です。電車はそこから左へカーブしてJR西日本の『柏原駅』の片隅に滑り込みます。
4分ほどの短い旅は、あっという間に終わってしまいます。全線が単線で行き違いの設備はなく、終日1本の電車が柏原駅と道明寺駅の間を行ったり来たりしています。日中の時間帯は30分に1本の運行です。JRの駅に間借りしているような『柏原駅』に近鉄独自の改札口はなく、道明寺線のホームに設置された簡易的な入出場改札機にICカードをタッチしてからJRの改札を出ることになります。
乗ってきた電車に再び乗って戻りましょう。道明寺駅付近を地図で見ると、おもしろいことに気がつきます。『大阪阿部野橋(おおさかあべのばし)駅』から来た南大阪線本線が道明寺駅の手前で大きくカーブして駅に入って来るのに対して、道明寺線のほうは真っすぐに駅に入ってきます。これは『柏原駅』~『道明寺駅』の間が先に開通したためで、1898年に河陽鉄道という会社が建設しました。ちなみに、この路線は近鉄で最も古い路線だそうです。『大阪阿部野橋駅』への路線の開通はずっと後になってからで、1923年のことになります。
『道明寺糒(ほしい)』『道明寺粉』発祥の寺へ
駅名や線名にもなっている、古義真言宗・蓮土山『道明寺』へ伺いましょう(写真)。7世紀中ごろに土師(はじ)氏の氏寺として建立された道明寺は、その後、戦国時代の戦火や江戸時代の洪水により現在地に移りました。本尊の『十一面観音立像』(国宝)は、土師氏の末裔である菅原道真によって彫られたと伝えられています。残念ながら拝観は毎月18日と25日のみで、訪れた日には拝観することができませんでした。
道明寺といえば、和菓子の『道明寺』(関西風桜餅)がすぐに思い浮かびます。その材料となる道明寺粉は、餅米を蒸して乾燥させた道明寺糒を割って粉にしたもの。道明寺糒は、このお寺が発祥だそうです。本場の『道明寺』を買おうと思ったのですが、近辺で和菓子屋さんを見つけることができませんでした。かわりに道明寺で売っている道明寺糒を買ったのですが、筆者の技術ではこれを和菓子に変身させることは至難の技です。道明寺糒は、買ったそのままの姿で台所の置物と化しています。
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- フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。
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