自分らしく

〈近畿圏枝毛線巡礼〉(16)阪神電鉄 武庫川(むこがわ)線

タイガースにちなんだ電車が走る超ミニ路線

阪神電鉄といえばタイガース。そのタイガースにちなんだ電車が走る路線が、阪神電鉄『武庫川線』です。1.7kmの区間を2両編成の電車が終日行ったり来たりするだけで、本線への直通電車はありません。

さっそく乗ってみましょう。阪神電鉄本線『武庫川駅』はホームが川の上にあるたいへん珍しい駅です。そのホームの端から階段を降りたところが武庫川線の発着するホームになっています。待っていた電車は『タイガース号』(写真)。真っ黄色の車体に黒いストライプが入っています。おなじみ、タイガースのシンボル・カラーですね。車内の壁は、白地に黒のピン・ストライプ。こちらはビジター用のユニフォームの柄です。凝っています。武庫川線用の電車は他に、『甲子園号』『トラッキー号(タイガースのマスコット)』『TORACO号(タイガース・ファンのこと)』があるそうです。

電車は、ほぼ武庫川の堤防に沿って走ります。発車して1分半ほど走ったら『東鳴尾駅』に停車、そこから1分半ほどで『洲先駅』、さらに2分ほどで終点の『武庫川団地前駅』に着きます。全線乗っても5分程度です。

なぜ、こんな短い枝毛線が造られたのでしょう。武庫川線が開通したのは1943年(昭和18年)。軍需工場である『川西航空機』(現・新明和工業)鳴尾製作所への従業員および資材輸送のために、軍の命令で建設されました。戦後は途中駅の洲先駅までの営業でしたが、鳴尾製作所跡地が武庫川団地として開発されたのにともない、1984年に武庫川団地前駅まで延長されたのだそうです。現在は、沿線に住む住民と通勤者たちの足となっています。

狛犬ならぬ狛猪が参拝者を迎える神社

武庫川駅に戻って阪神本線をくぐり、反対側へ歩いてみましょう。住宅街を少し歩いたところに『岡太(おかた)神社』という大きな神社があります。普通なら狛犬が載っているはずの台の上には、イノシシが載っています。これは、祭神のひとつである恵美須大神が毎年正月9日に行う災害防止の神事『静止打(ししうち)』の妨げにならないよう、等覚寺へ逃れた猪(しし)を迎えに行く祭礼(現在は廃絶)を偲ぶために置かれたものだそうです。

商店街を歩きますが、お土産になりそうなものを売っているお店が見当たりません。残念ですが、お土産は、なしということになりました。

サポーター

老田道夫
老田道夫
フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。

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