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〈近畿圏枝毛線巡礼〉(18)JR西日本 阪和(はんわ)線 東羽衣(ひがしはごろも)支線

1.7kmの超ミニ路線は都会のなかのローカル線

JR西日本『阪和線』の『鳳(おおとり)駅』は、『天王寺(てんのうじ)駅』から電車で15分ほどのところにあります。この駅から、今回ご紹介する『東羽衣支線』(駅の案内では「羽衣線」と呼ばれることもあります)が発着しています。

この路線、鳳駅と東羽衣駅の間、たった1.7kmを結ぶ超ミニ路線です。鳳駅の跨線橋を渡って東羽衣支線の専用ホームへ行くと、4両編成の電車が待っていました。こんなミニミニ枝毛線に4両編成は過剰ではないか、と思いましたが乗客はかなり多く、買い物帰りのお母さんや女子高生など、シートがほぼ埋まるほどのお客さんが乗りました。

駅を発車すると線路は本線から分かれて右にカーブし、すぐに高架線となります。車窓の両側はすべて市街地で、中規模のビルや住宅がびっしりと建ち並んでいます。都会のなかのローカル線、というのがいちばんぴったりくる形容です。

この東羽衣支線は阪和線の前身である『阪和電鉄』によって、本線と同時の1929年に開通しました。なぜこのような単距離路線が作られたかというと、終点の東羽衣駅近くにある海水浴場『浜寺公園』へのアクセス輸送を狙ったためです。浜寺公園は『南海鉄道(現・南海電鉄)』が開発した海浜リゾートで、大阪~和歌山間の輸送をめぐってライバル関係になることが予想されていた阪和電鉄と南海鉄道の関係は、この路線の建設によってさらに悪化したのだとか。

現在、阪和線はJR西日本の路線となり、南海電鉄と仲良く関西空港の旅客輸送を分け合うとともに、数年後には新線『なにわ筋線』に乗り入れて、ともに関西空港から大阪、新大阪を直結する路線となる予定です。

大鳥大社は千年以上の歴史を誇る古社

鳳駅から歩いて10分ほどのところにある『大鳥大社』(写真)にお参りしましょう。和泉国の一ノ宮で、全国の大鳥神社および大鳥信仰の総本社となっています。ご祭神の『日本武尊(やまとたけるのみこと)』が伊勢国能褒野(のぼの)で亡くなられた際に、その魂が白鳥となって飛んでいき最後に舞い降りた地に社を建て、お祀りしたのがこの神社だそうです。延長5年(西暦927年)に完成した『延喜式神名帳』に名前が載るほどの古社です。

お土産は、鳳駅から大鳥大社を結ぶ道の一本裏手にある和菓子屋さん『しん倉』で買いました。お店イチオシの『栗三笠』もおいしいですが、筆者のおすすめは『栗衣』です。大粒の栗の甘露煮を小倉餡で包み焼き上げたお菓子で、甘さを抑えた栗と餡のハーモニーが絶妙です。

サポーター

老田道夫
老田道夫
フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。

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