自分らしく

〈近畿圏枝毛線巡礼〉(6)阪急電鉄 嵐山線

観光路線と生活路線の両面を併せもつ

阪急電鉄『京都線』の『桂駅』から、有名な観光地である嵐山に向かう『嵐山線』が分岐しています。阪急京都線の前身である『新京阪鉄道』が建設した路線で、1928年に全線開業しました。全長は4.1kmで、途中に『上桂駅』と『松尾大社駅』があります。

開業当社は全線複線だったのですが、思ったほどお客さんが乗らず、2年後には複線の設備はそのままに単線で営業するようになりました。やがて戦争が激しくなり、『金属供出令』という国の命令で不要不急路線と認定されてしまい、1線分の線路を国に供出させられ、現在も単線のままになっています。

『桂駅』で京都線から乗りかえた電車は、かつて京都線を特急として走っていた電車を4輛編成に短縮した車輛でした。1980年代前半に大阪で勤務していて、その頃何度かこの電車に乗ったことがある筆者にとっては感無量の再会でした。さっそく乗り込むと、当たり前と言えば当たり前ですが、座席は観光客でいっぱい。外国からの方も多く、いろいろな言語が飛び交って賑やかです。

途中の2駅にはどちらも行き違い設備が設けられており、特に『上桂駅』では必ず上り下りの電車の行き違いが行われます。電車の間隔は朝夕のラッシュ時で7~8分、日中は10分で運行されています。沿線はびっしりと家が立て込んでいますので朝夕は通勤通学客で込み合い、日中は観光客で込み合うという、経営的には効率の良い路線になっているようです。

奈良時代初期創建のお寺に参る

嵐山駅を出ていちばん近い神社仏閣を探すと、『虚空蔵法輪寺』というお寺が見つかりました(写真)。縁起によれば、和銅6(713)年に元明天皇の勅願により行基が創建した由緒のあるお寺でした。応仁の乱や蛤御門の変などの戦火によって堂宇が焼け落ち、現在の建物は明治17年に再建されたものだそうです。小さなお寺ですが、山門などは京都らしい静かなたたずまいを見せ、観光客も少なめで落ち着いて拝観することができました。

お寺を辞し、観光客の間を縫うように嵐山のメインストリートを進むと、『本家八ッ橋』の嵐山店を見つけました。『八ッ橋ようかん』というのがありますよ。6種類あって、そのうち3種を選んでセットにしてもらうことができます。『八ッ橋』(ニッキ強弱の2種あり)、『黒糖』、『柚』をチョイスしました。八ッ橋は、その名のとおり、あの銘菓・八ッ橋の味がそのままようかんの形になったお菓子でした。

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老田道夫
老田道夫
フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。

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