乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

温泉問題(あるいはお風呂など)

右胸全摘手術後の温泉行きは躊躇

1年に何回か夫と一緒に温泉宿に行く。私自身はそれほど温泉好きではないのだが、夫の方は何しろ宿に着くと朝に夕に何度でも入りたいタイプ。さて、〈乳がん〉で右胸全摘手術を受けてからは、この温泉行きがちょっと問題になった。

私は「手術を何度も受けるのが嫌」という単純な理由で、再建手術は受けていない。ブラジャーも乳がん経験者の親族からかなり値段の張る専用下着を扱っている某有名メーカーを紹介されたが、結局のところ通販で安いパッドを見つけ手持ちの下着に縫い付けて済ませている。つまり、かなりがさつで面倒臭がり屋なのだ。そんな私でも、さすがに片胸ぺっちゃんこで斜めに一直線の傷のはいった裸を(同性とはいえ)人目に堂々とさらす勇気はなかなかに出ない。いや両胸揃っていたときでも、あまり自慢できる姿形ではなかったので、堂々とはしていなかったか…。

というわけで、手術後当初は露天風呂付客室やら、時間制で貸切風呂が利用できる宿やらを選択していた。しかし、それでは選択肢が限られてくるし、予算も上げざるを得ないことが多い。だんだんと図々しくなってきて、最近では空いた時間こそ狙うものの、大浴場に入るときはタオルを肩からさっとかけ、洗い場では仕切り(最近の大浴場は仕切りが適度に配置されていることが多い)にうまく隠れながら、そして湯船には肩までしっかりつかるという方法でしのいでいる。人に見られて困るものでもないはずだが、見る方の人をびっくりさせるのは(特にお子さん連れも多かったりするので)どうにも気が進まない。

できるだけ多くの選択肢がほしい

一方で、入浴着という体の傷跡をカバーする入浴用の下着の普及も進んでいるようだ。私はまだ利用したことがないのだが、ありがたいことに「入浴着を歓迎します」というメッセージを掲げている温泉施設も増えてきている。

ただ、気を遣う場面は温泉施設に限らない。私はコロナ禍で丸々3年お休みしていたジム通いを再開している。あまりの猛暑で運動不足を散歩で補うのはもう無理と判断したからだ。ジムではもともと湯船につかる習慣はなかったので個別のシャワーブースを使うだけだが、シャワーブースへの移動やロッカー室での着替え時などは、やはり肩掛けタオルや開いたロッカードアのお世話になっている。

こんな自分の姿をちょっと滑稽に思うこともあるが、再建手術を受けるにしろ、入浴着を使うにしろ、個人個人の想いは異なるので、できるだけ多くの選択肢があることが望ましいと思っている。

サポーター

田原真理
田原真理
大学卒業後、数年間、金融会社に勤務。その後、日本語教師を目指すも挫折。専業主婦、子育てを経て、現在はコンサルティング会社で主に経理業務を担当。
2021年に〈乳がん〉の診断を受け、右乳房全摘。2022年初よりホルモン療法中。

プロフィール