自分らしく
遥かな河の向こう側に何が見える? Many rivers to cross/Jimmy Cliff
「もう若くはないな」と自覚せざる得なくなったこのころ、どんなときにもっとも力づけられるか、励まされるかと言ったら、それは、しばらく見ることのなかった古い馴染みが元気でいるのを見たときだろう。それも、ただ明るいだけだったら逆に気が拗けてしまいかねないけど、「時の重み」を耐えきったであろうことが透けて見えながらも、それでもしっかりと生き続けている姿に出会ったときではないだろうか。
そんな気にさせられたのが、ジミー・クリフが彼の代表曲を歌った動画だ。洋楽ファンにはお馴染のイギリスの定評ある音楽番組『Later …with Jools Holland』での2008年のパフォーマンス。このとき、ジミーは丁度60才、今の僕と同い年だ。
日本でレゲエが紹介されだしたのは、僕が中学から高校に入るころだったはず。その時にレゲエ界の大スターとして紹介されたのがジミー・クリフとボブ・マーリー。高校時代に彼の『Best of live』というレコードを買って、そのなかでとても気に入っていたのがこの曲だ。
改めて聴くと、この曲、レゲエというよりスケールの大きなゴスペル・バラード。ジミーは太くはないけど強靭なバネを内に隠し持ったような高く澄んだ声で、苦難に耐えながらも諦めない力強い意志を、全身を振るわせて歌っていた。
そんな彼の姿をほぼ30年ぶりに見た。かつて痩身でハンサムだった彼は、奇妙にコミカルな老眼鏡(?)をかけ、さすがに少々、お腹も出始めているようではあったけど、ハリをたっぷりと保ったその声に衰えはない。年を重ね、歌には余裕を感じさせ、クライマックスでは即興で「愛こそ我が拠り所、知恵は我が糧、苦闘こそが我が道…」と全身全霊で歌い上げる。うーん、ファンタスティック。歌うジミーをじっと見つめる元ジャムのポール・ウエーラーの後ろ姿がチラリと映る。「こりゃ、まいった!」と叫んだに違いない。ジミーは2020年の今も歌い続けている。数多くの河を超えた先に彼は何を見ているのだろう。
▼Many rivers to cross
https://www.youtube.com/watch?v=kGeCeK85sUg
サポーター
- いよいよ還暦、そして定年。「この機会に生き方をガラッと変えられないか?」などとずっと考えています。ごく「フツー」の冴えないサラリーマン生活だったわりには、なぜかちょっとした冒険にもいろいろとした巡り合えたし、ここまで生きてこられた恩を自分以外に返さなきゃなぁ、と思う今日このころ。
プロフィール
最新の記事
- 自分らしく2024年10月15日空が一面に海に見えた日
- 自分らしく2024年5月14日May in Paris(パリの5月)
- 自分らしく2024年2月15日沈黙の涙のなかで
- 自分らしく2023年6月15日花はどこから来たの? Where have all the flowers come from?