乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント
勇気と冷静さと知恵
「ニーヴァの祈り」を思い出したときから前向きに
2014年に浸潤性乳管癌ステージ3の診断を受けて、仕事を続けながら化学療法と外科手術を受けた経験から、思うことを徒然に書いてみます。幾ばくかのご参考になればうれしいです。
〈がん〉の診断を受けることは大変ショッキングなことですね。私はまず「何かの間違いに違いない」と、無意識に拒絶反応を起こしました。認めたくないわけです。でも、自分が認めようが認めまいが、事実として〈がん〉があるのですから、受け入れるしかありません。
私は以前から座右の銘としていた「ニーヴァの祈り」(The Serenity Prayer)を思い出しました。
「神よ、
変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ」。
現実を真っすぐに見据えて、自分の力が及ぶものとそうでないものを区別する知恵、変えられるものを変える勇気、変えられないものを受け入れる冷静さを得たいという願いに強く共感していたのです。〈がん〉を患っていることは事実であり、その事実は自分の力で変えられるものではないことを納得し、そのうえで自分がコントロールできることはなにかを考えました。
制御できないことに悩むのは、時間とエネルギーの無駄
受診した病院では、既に腋窩リンパ節に転移が認められたため、左側乳房全摘および腋窩リンパ郭清が必要と言われました。治療を受けるか拒否するか。これは自分に決定権があります。医師に進められる治療を全て受けたとしても、必ず良くなるとは限りません。抗がん剤の副作用も嫌だし、手術も嫌です。治療を受けない選択肢も考えましたが、しこりが日々成長して痛みも出て、熱をもち始めたので、〈がん〉が表面に出るのは嫌だと思って治療に踏み切りました。自分で決めたことなので、副作用も耐えられたのだと思います。仕事を続けていたことも、気力を保つ助けになりました。
自分でコントロールできないことに悩むのは時間とエネルギーの無駄なので、とりあえず前に進むというのが私の生き方です。人は誰でも必ず死にます。生まれたときから死亡率100%なのです。だからこそ、人生は貴重なのですよね。限られた人生の時間を無駄にしないよう、できるだけポジティブに、毎日毎時間をできるだけ楽しむことに努めています。
サポーター
- 青年海外協力隊で、在フィリピンインドシナ難民センターに2年在勤。外資系ブランド日本法人での事業立上や再編など、さまざまなプロジェクトに携わり、2012年から2017年末までビクトリノックスジャパン株式会社代表取締役。2018 年、スイス機械式時計ブランドOrisの日本法人を立上げ。現在、オリスジャパン株式会社代表取締役、在日スイス商工会議所役員・日本プレイワーク協会理事、大学や自治体などでの講演や執筆なども手がける。
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