自分らしく

〈首都圏枝毛線巡礼〉(10)JR東日本鶴見線 大川支線

朝と夕方しか電車が走らない超ミニ路線

JR東日本『鶴見駅』から発着する『鶴見線』は、主に沿線の工場で働く人たちを乗せて工場地帯の真只中を走ります。その鶴見線には2つの枝毛線があるのですが、今回は『武蔵白石駅』から分岐し、わずか1km先の『大川駅』へ行く通称『大川支線』をご紹介します。

「武蔵白石駅から分岐する」と書きましたが、実は武蔵白石駅には大川支線のホームがなく、終点の『大川駅』へ行くには鶴見駅からの直通電車に乗るか、武蔵白石駅の隣の『安善駅』で乗り換える必要があります。大川駅へ行く電車の本数は極端に少なく、平日は朝夕のみの9往復、土休日に至っては朝夕のみの3往復しかありません。観光ではなかなか訪れにくい路線ですね。

鶴見線のルーツは、埋立地に誘致した工場の貨物を輸送するために大正13年(1924年)に設立された『鶴見臨港鉄道』で、昭和18年(1943年)に旧国鉄の路線になりました。貨物輸送がメインだったので、沿線の工場に向けて多くの引き込み線が設けられました。大川支線はその名残のひとつで、この支線からもいくつかの引き込み線が工場のなかへ延びていました。現在では通勤する人たちだけが利用し、貨物輸送はありません。

大本山總持寺に場所を譲った古刹

鶴見へ戻り、近くの『曹洞宗 醫王山 成願寺(じょうがんじ)』へ行ってみましょう。貞観7年(852年)に貞観寺として創建されたのがはじまりと伝えられるこのお寺は、大本山總持寺が明治31年の火災で焼失した際、境内の大半を寄附し、現在の地に移転しました。門の両脇に立つ仁王像は、室町時代の作だそうです。全身が真っ赤に塗られ、アンバランスなほど大きなお顔がなんとなくユーモラスです。

お土産を買おうと思ったのですが、工場地帯のせいか、そうしたお店が極端に少なく、やっとのことで探し当てた和菓子の店『清月』は定休日でした。残念。

サポーター

老田道夫
老田道夫
フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。

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