自分らしく

〈近畿圏枝毛線巡礼〉(4)阪急電鉄 今津線(今津南線)

分割された路線の片割れは住民の気軽な足

阪急電鉄『今津線』を名乗る路線は、二つあります、ひとつは『西宮北口駅』から『宝塚駅』に向かう路線(通称:今津北線)、もうひとつは同じ西宮北口駅から『今津駅』へ向かう路線(通称:今津南線)です。どちらも今津線を名乗っていて、私のようなよそ者は混乱しますが、地元の方々はそんなに不便を感じていないようです。

なぜ、このようなことになったのでしょうか。この二つの路線はもともと1本に繋がっていたのですが、西宮北口駅の改良工事で二つに分割されてしまったのです。かつて神戸線と今津線は、西宮北口駅のど真んなかで十字型に交差していました。しかし立体交差ではないので、当然神戸線の電車が通るときは今津線の電車は停車しなくてはいけません。逆に今津線の電車が通るときは神戸線の電車が停車します。電車の本数が少なければ問題はないのですが、次第に本数が増えてくると停車時間も増え、電車が詰まってしまいます。その問題を抜本的に解決し、神戸線が今津線に邪魔されずに走れるように今津線を分割した、というわけです。

西宮北口駅の今津南線のホームは、階段を上がった2階にあります。阪急電鉄で最も短い3輌編成の電車は、発車して2分も経たないうちに唯一の中間駅である『阪神国道駅』に到着。さらに2分ほど走ると、もう終点の今津駅です。ここでは『阪神電車』に乗り換えることができます。1.7kmほどしかない超枝毛線ですが、ラッシュ時は7~8分、日中は10分間隔で走る沿線住民の大切な足になっています。

十字交差の線路がモニュメントとして保存

沿線によさげな神社仏閣が見当たらないので、西宮北口駅の南にある商業施設『西宮ガーデンズ』に行ってみました。近くにある公園のなかに、今津線と神戸線が十字型に交差していた時代の線路が保存されています(写真)。傍らには、写真付きの解説版も設置されています。

西宮北口駅に戻ります。駅のコンコースにある『高山堂』で『スウィートまーめいど』を買いました。1962年、西宮からヨットのマーメイド号を操って太平洋単独横断航海に成功した堀江謙一さんに触発されて作られたお菓子だそうです。
お菓子の楕円の形はヨットを、卵の黄味で描いた表面の一本線は水平線を表しているのだそうで、口に含むと、卵、バター、クリームでできた皮と白餡がとろけるように口中に広がります。

サポーター

老田道夫
老田道夫
フリーの編集/ライター。
主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。

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