自分らしく
〈近畿圏枝毛線巡礼〉(15)近畿日本鉄道 天理(てんり)線

もとは軽便鉄道(=簡便な規格の鉄道)の路線
近鉄『天理線』は『橿原線』の『平端(ひらはた)駅』から分岐する枝毛線で、4.5kmの短距離ながら全線複線で運行されています。日中は1時間あたり3本の普通電車しか走らない路線としては過剰な設備のように思えますが、これは、終点天理駅の近くにある天理教の祭典日や本部行事開催日に京都や難波などから多くの臨時列車が運転されるためです。
天理線はもともと法隆寺と天理を結ぶ『天理軽便鉄道』として1915年(大正4年)に開通しましたが、のちに近鉄の前身『大阪電気軌道』に買収され、現在に至っています。
平端駅始発の普通電車に乗ります。取材した日は日曜日でしたが、乗客は1輌に10人弱といったところ。平端駅を出た電車は左へ大きくカーブし、佐保川を渡ると平らな土地を笠置山地に向かってほぼ一直線に走ります。途中の『二階堂駅』『前栽(せんざい)駅』の近くに住宅地が見られるものの、沿線はほぼ田んぼやビニールハウスばかりです。終点の『天理駅』近くになって、ようやく市街地らしい景観が現れます。
天理駅は多くの臨時列車をさばくために、線路が3線、プラットホームが4面もある、ちょっとしたターミナル。改札を出ると、目の前に緑濃い山が左右に広がります。「大和盆地の東の端に来ているのだなぁ」と実感しました。
ふだんは見ることのできない場所を拝する
日本最古の神社のひとつ、『石上神宮(いそのかみじんぐう)』へ行ってみましょう。天理駅から天理本通り商店街、天理教の巨大施設群を抜けてしばらく歩くと、森のなかに巨大な石造りの鳥居が出現します。
取材した日はたまたま、『神剣フツノミタマ顕現150年記念行事』として、『御本殿禁足地(=立入禁止の場所)』を間近で拝観させていただくことができました。明治時代にこの禁足地を発掘調査したところ、古事記・日本書紀に記述がある神剣フツノミタマが出土し、それから150年を経た現在も神宮の本殿でお祀りされているということです。
おみやげを探して、天理本通り商店街にあるお菓子屋さんの『ハーモニー』に立ち寄りました。「なにか、天理らしいお菓子はありますか?」という筆者の問いに、「うーん、ありまへんなあ」と店主。結局、吉野葛を使った『柿くずもち』を買いました。上品な甘さでした。
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主なフィールドはバレエ、鉄道、鉄道模型、70年代プログレッシヴ・ロック、古代史など。
近年は自費出版原稿のリライト、編集を主に手がける。好きな言葉は「棚からぼたもち」。
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