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「ニューヨーク医療視察ツアー」に参加して(2)

2019年9月に参加した「ニューヨーク医療視察ツアー」。今回は2回目のレポートです。

パールマター・ブレストセンター(NYU Perlmutter Cancer Center)の視察

朝7:20ホテルのロビーに集合し、徒歩でブレストセンターへ。同じミッドタウンの一角にあるこの11階建ての外来専門病院は、想像していたよりこぢんまりとした佇まいで私たちを迎え入れてくれました。2014年、映画館の跡地に建てられたそうです。

まずはロビーで歓迎の挨拶をいただき、Deborah Axelrod, M.D.(デボラ・アクセルロッド医学博士 乳房臨床サービス&プログラムディレクター)より病院全体のコンセプトやプログラム概要を説明してもらいました。「最新のテクノロジーと優秀なスタッフが自慢の病院です」と話されましたが、ドクターだけでなく、看護師、技師、ソーシャルワーカーなどの専門家のことにも触れていたのが印象的でした。

教授たちによるプレゼンテーション

会議室に移動し、まずはHildegard Toth, M.D(ヒルデガード・トス 医学博士 放射線科准教授、乳房イメージング部門長)からスクリーニングと診断についての説明。アメリカでは、7割以上の乳がんがマンモグラフィー検査で発見されるそうです。日本では受診率がまだ3割台(アメリカは8割以上)だったことを思わず思い出し、検診の必要性を実感しました。

次にNancy Stewart(ナンシー・スチュワート 看護学修士)から外科的治療についての話があり、「80年までは全摘がスタンダードだったが、今は部分切除や放射線などに選択肢が増えてきた」と説明してくださいました。「ゴールと望みを患者さんとお話することを大事にしている」と聞き、患者へ寄り添う姿勢が徹底していて、日本との違いを実感しました。

また、Robin Kleinman(認定乳房ケア看護師)もリソースの利用についてお話をしてくれました。ソーシャルワーカーをはじめとしたサポートチームが患者たちのニーズに応え、紹介状や看護師の訪問派遣、カウンセラーや精神科、リハビリ施設やサバイバーシッププログラム(太極拳、ヨガ、料理教室)、マッサージセラピーなど適切なプロフェッショナル、専門家へとつなげているそうです。この点が「まさに、日本と違う」と思いました。「治療が終了したら終わり」でなく、そのあとのフォローがつながっていることに感心しました。

James Speyer, M.D.(ジェームズ・スパイアー医学博士)からは、全身療法のための術前術後の患者評価についてお話がありました。15年前に設立されたときは科が別々だったものを統合して、がんの総合治療を目指しているとのこと。週一で専門家医が集まってチームミーティングを行い、内科・外科・放射線科などでDMG(Disease Management Group)を結成し、疾病管理を行っているそうです。プロセス成果、中間成果、症状の改善などの健康状態についての成果を確認し、生活の質の向上(Quality of Life)を向上させていくことまでチームでサポートしていること自体、もう驚きでしたし、「病院はCancer Journeyの家でありたい」というひと言が心に刺さりました。

がんのことを「闘病」と言わず、「キャンサージャーニー」(がんの旅)というのですね。確かに長い旅なので、一緒に旅に出る。仲間がいる。まわりに助けてくれる専門家がいる。こう思えることは、日本では感じたことのない、じんわりとあたたかい言葉でした。

Maryanne Kwa M.D(メアリーアン・クワ医学博士)とOlivier Maisonet(オリビエ・メゾネット ナースプラクティショナー)から、それぞれ臨床試験や放射線腫瘍科の現状のお話を伺い、その後、施設見学ツアーで院内を案内いただきました。

点滴ルームも案内してもらいました。そこでは、アロママッサージなども抗がん剤治療と同時に施術してもらえるそうです。点滴している間にマッサージしてくれるなんて、なんて素敵なサービスなのでしょうか。

フロントにドクターたちの名刺が置いてあり、「患者さんからメールや電話をしてもOK」と聞き、またまたびっくり。2日以内には届いたメールに返信するようにしているそうです。受診患者の数も違うのでしょうが、あまりの日米の医療現場での患者対応の違いを目の当たりにし、「日本でも、もっと患者として提案主張し、快適にキャンサージャーニーを送る日がくるようにできないものか」と心から思いました。

パールマター・ブレストセンター