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シンポジウム 「がん患者の社会参画、産業医にできる支援」に参加して

2019年3月21日   一般財団法人 日本健康推進機構主催の産業保健シンポジウム

「がん患者の社会参画、産業医にできる支援」シンポジウムに参加してきました。人材紹介に関わる自分としても多くの学びがありました。ご自分にがん患者としての体験がない、あるいはご家族や友人にがん患者がいらっしゃらない方でも、2人に1人ががんに罹患しているこの時代、自分のこととして考えておかれてはいかがでしょうか?

シンポジストは、以下の方々です。
・岸田 徹氏(NPO法人がんノート 代表理事)
・髙橋哲雄氏(産業医)
・林 恭弘氏 (産業医)
・溝口博重氏(一般財団法人 日本健康推進機構)

健康の定義は「社会参画できること」

WHOが採択したICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)では、健康の定義を「傷病や障がいをもっていても社会参画できること」としています。このシンポジウムでは、その定義を反映し「がんなどの病気になっても社会に参画する=仕事を続けられる」をテーマとして設定。海外の事例なども示しながら、ファシリテーターの溝口氏が課題を整理をしていきました。

多くの方にとって「がんになったら、仕事をどうするか?」ということは、身近でありながら実際にはどうしたらいいかわからない課題ではないでしょうか。病院での手術などの治療もそうですが、日常生活の送り方、就労についての選択、費用の捻出方法など、考えておくべきことは少なくないでしょう。今回のシンポジウムでは、「産業医はそんな状況をどのように支援できるのか」を考える機会を提供いただきました。

がんと就労について:産業医  林 恭弘先生

がんに罹患する人は年々増えていますが、死亡率は低下していて治る人が増えています。定年や年金受給開始時期が遅くなる傾向からも、企業においてがん患者の退職者を出さないことが重要。制度として、傷病手当金、高額医療費などがあります。

がん患者の立場から、就業上の問題として次のことが挙げられます。
●職場に迷惑をかけるのではないか
●どの範囲(上司、同僚)まで伝えるか
●休業の上限を超えると退職を余儀なくされる
●時短勤務ない場合は復職困難。後遺症に悩まされる
●時差出勤
●欠勤が増えると減給、経済的に不安

がん患者の社会参画:産業医  髙橋哲雄先生

がん患者の会社復帰は、企業活力としての経営戦略、ホワイト企業のイメージ(社員のモチベーション、優秀な人材獲得)、優れたCSRといったメリットを企業にもたらします。

職場に求められることは、イメージ先行にならないような啓蒙活動の必要性(がん≠死、手術後退院≠完治)、産業保健スタッフや人事との連携、本人との積極的なコミュニケーション、風土づくり、就業への配慮の実施など。 また、人事や事業主に求められることなどもそれぞれあって、何よりも本人が「配慮は期待するものでなく、十分な説明によって理解を得て引き出していくもの」であることを認識することが重要です。

そうしたなか、産業保健スタッフや産業医には、がん医療と職場の架け橋として「翻訳者」「コーディネーター」という役目であり、オーダーメイドの就労配慮が期待されています。

がんとの共生:NPOがんノート代表  岸田 徹氏

毎年100万人ががん罹患しており、これは秋田県の人口に相当します。出生人口より多く、特に3人に1人が働く世代。治療を続けていくにはお金がかかること、AYA世代(15-39才)のがん患者特有の問題があること、それぞれの患者の声を社会に届けたいですね。 こうしたことを自身の体験を通じて発信したいと思い、がんノートを立ち上げ、ライブでインタビュー100回を超えて継続しています。

まとめ

「働きたいという気持ちがあっても、働く場の提供がない」という現実に、がん体験者として、また人材紹介業に携わる者として、問題意識をもっていきたいと改めて感じました。 特に最近は、「健康経営」という考えを国も推進しており、経済産業省も次のように述べています。

*「健康経営」とは、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき従業員などへの健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上などの組織活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

経済産業省 健康経営の推進

産業医がいない規模の小さな会社や、個人事業で仕事をされている方も増えており、こうした方々への支援も必要であり、何ができるのか、考えていきたいと思います。

主催:一般財団法人 日本健康推進機構