自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(10)クレイジー・ホース Crazy Horses

時代をはるかに先取りしていた渾身の一曲

今月、ご紹介する『クレイジー・ホース』(Crazy Horses)を歌ったオズモンズ(The Osmonds)は、5人兄弟で組んだアメリカのグループです。1963年のデビュー時はオズモンド・ブラザーズ(The Osmond Brothers)として活動していましたが、1970年11月にオズモンズと改名しています。

オズモンズが『クレイジー・ホース』(Crazy Horses)をリリースしたのは1972年です。それまで歌っていた軽いポップスの影はまったく消え失せ、かなりヘビーなハードロック。急激な路線変更にファンたちはかなり戸惑ったことでしょう。それでも同名のアルバムともどもアメリカで14位、イギリスでは2位という売上げを記録しました。

では、なぜこんな路線変更に踏み切ったのか。五男のメリル・オズモンドの話によると、デビュー以来、発表する曲はすべてレコード会社が選んでくれたものでしたが、やはり自分たちで音楽を創作したいという気持ちが強かったようです。ある日、地下室でリハーサルをしていたとき、四男のウェインが重いロックのリフを弾き始め、五男のメリルがメロディーを思いつき、三男のアランがコードをつける…こうした作業で1時間以内に曲ができ上がったみたいです。

『クレイジー・ホース』というタイトルを聞いて「アメリカ・インディアン」を想い描いた人が多いと思いますが、歌詞を見ればその連想は的はずれです。” Crazy Horses ” とは自動車を指し、クルマがあふれて” They go smokin’ up the sky ”(排気ガスで空を汚す)といった歌詞でアメリカ社会を風刺するエコロジーと環境についての曲なんですね。因みにアルバムジャケットには、大きな古いクルマに囲まれた廃品置き場の写真が使用されています。

オズモンズの軌跡はまさにアメリカンドリーム

オズモンズは5人の兄弟で構成されていますが、実際は上に2人の兄と下に妹、末弟がいる9人兄弟の大家族です。長男と次男は2人とも生まれつき重度の難聴で、彼らの補聴器代を稼ぐために地元ユタ州オグデンで歌い始めたのが、オズモンズ結成のきっかけでした。

地元で人気が高まり、ひょんなことからディズニーランドで歌謡ショーを披露することになります。それが大ウケし、あれよあれよという間にディズニーランドTVショーへの出演が決まります。この放送を見ていたアンディ・ウィリアムスの父親が息子に「すごい兄弟がいるから、お前の番組で使ってやったらどうだ」と進言。それがきっかけでオズモンド兄弟は人気番組『アンディ・ウィリアムス・ショー』のレギュラーの座に収まります。まさに、絵に書いたようなシンデレラストーリーですね。

『アンディ・ウィリアムス・ショー』は当時世界中で放送され、日本でも人気があったことから(NHKが放映)、1970年ごろからはカルピスのCMに家族揃って出演しています。しかも日本語歌唱です。

▼クレイジー・ホース Crazy Horses
https://music.youtube.com/watch?v=28iHA3501MY

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

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