自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(7)マンダム〜男の世界 Lovers of the World

日本国内の中高年層しか知らない洋楽かも

洋楽のなかには日本独自にヒットした曲が数多くあります。たとえば、ヴィーナスの『ショッキング・ブルー』(Venus:The Shocking Blue/1970年)やダニエル・ブーンの『ビューティフル・サンデー』(Daniel Boone:Beautiful Sunday/1976年)、ザ・パワー・ステーションの『ゲット・イット・オン』(The Power Station:Get It on/1985年)など、数え出すと枚挙に暇がありません。

なかでも1970年に爆発的にヒットした『マンダム〜男の世界』(Lovers of the World)は、現在だと日本国内の高年層しか知らない曲だと思われます。私もなんとなく洋楽の素晴らしさにのめり込み始めた中学1年生のころに聞いて、「かっこエエ」と思ったことを覚えています。

“男の世界”を歌で体現したジェリー・ウォレス

『マンダム〜男の世界』は、TVCMの曲として使用され大ヒットにつながりました。その会社が日本の男性化粧メーカーの『マンダム』。1970年当時の社名は『丹頂』で、化粧品シリーズ『マンダム』を初めて発売したときのTVCMソングがこの曲でした。しかも、起用された人物がチャールズ・ブロンソン(Charles Bronson 1921年-2003年)。これでもかというほどの“男の雰囲気”が溢れ出るCMでした。

こうした“男の世界”を体現した曲を見事に歌い上げたのが、アメリカのカントリー歌手ジェリー・ウォレス(Jerry Wallace 1928年- 2008年)でした。1960年代半ば以降はカントリー・チャートでそこそこのヒットをコンスタントに出していましたが、『男の世界』を収録するまではアドバンス(レコード会社からの印税前払い金)も止まっていた状態だったみたいです。

ところが、この曲を歌ったことでウォレスのアーティストとしての流れが大きく変わります。1971年にはレコード会社の移籍をきかっけにカントリー・チャートを賑やかせるヒットを連発し始めました。もちろん、遠い日本での大ブレイクがアメリカでの活躍に直接影響を及ぼしたとは思えませんが、少なくとも『男の世界』は彼の人生を変えるきっかけになったのだといえるのではないでしょうか。

▼マンダム〜男の世界 Lovers of the World
https://www.youtube.com/watch?v=N9JN4aqMduo

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

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