自分らしく

4月のゆううつ

4月のゆううつ

中学も高校も
4月はいつもわくわくだった
どんな友達できるのか
どんな先生が担任か

4月をスタートすると
毎日なにかしら新しく
少しの不安でさえ
心地よい刺激

けれどあるとき
気がついた
みんながそうでは
なかったことを

「誰かに話しかけられるかな…」
「明日、理科室にいくとき誰と行こう…」

4月は緊張
4月は自分の出し方を迷う
彼女の4月は毎年ゆううつ

安心の5月が
そこまできてはいるけれど

昔から自分の過ごしてきた学校というところには、「何のためにこの空間があるのかしら」と首をかしげるような場所があったように思います。

小学校3年生くらいのころに「ちょっと裏庭のあの秘密の場所に来て」と言われました。コンクリートの壁に3方向を囲まれた小さな空間でした。そこに同級生の男の子と女の子が私を待っていて、「実は、ぼくYちゃんのことが好きなんだよね」「私もHくんのことが好きなんだ」と、こっそり教えてくれました。ふたりとも、いつも余り目立たないおとなしい人たちで、どうして急に私に教えてくれたのか不明ですが、何だかとても嬉しかったことを思い出します。今考えると、その秘密の場所はなにかゴミ置き場にでもするはずだったところなのでしょうか。

高校時代はとても古い校舎で過ごしていました。廊下の壁に、まるで忍者がふっと隠れることができそうな空間がありました。出口と入り口が空いたままで、なかは畳1枚分くらいの広さでした。クラスメートに声をかけられて休み時間にここに一瞬の時間入り込み、「今日、一緒に帰れる?」なんて話をした覚えがあります。ちょっとシャイな男子で、まだ人前で堂々と話せなかった懐かしい時代のことです。あるとき彼を好きだったらしいMさんに見つかり、「ねえ、あそこで何があったの?」と訊かれて、ドギマギしたことも思い出します。

私が中学の教員をしていたときに、担任クラスのNさんは、学校のなかに小さなかくれ場所をもっていました。クラスメートたちの明るいさわがしさが耐えられなくなるときは、昼休みの20分だけそっとその場所で身をひそめているのだそうです。そのかくれ場所がどこだったのか、探さないままでしたが、きっと文庫本を持ってそこに座っていたのだろうと思います。Nさんのことは1年生から3年生まで担任をしていましたが、5月ごろに教室移動を一緒にできたり、お昼ご飯を向かい合って食べられたりする友だちが見つかるまで、毎年不安そうだったなあとその表情を思い出します。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール