自分らしく

雪の2日後

雪の2日後

丁寧に雪かきされた道の
あっちにも
こっちにも
白い動物が
うずくまっている

雪だるまにも
雪うさぎにも
なれなかったと
つぶやいて

先日は、東京23区に久しぶりに「5㎝以上雪が積もるでしょう」と天気予報が告げ、「不要不急の外出は避けましょう」「リモートワークが可能であればそうしましょう」などの情報も流れ、街はかなりの大騒ぎでした。私の所属する大学では夕方から開催する予定の卒業論文発表会に学科の大学生が300人以上も参加するため、「帰りの電車が動かなくなる前に会を延期すべきか、時間を短縮すべきか」などの論議がメーリングリストで飛び交いました。

予報どおり雪が降り始めると、灰色の道路が、街路樹が、道ばたの車が、落ちてくる雪に覆われていきます。ぱさぱさぱさぱさ…ぱさぱさぱさ…と静かに降る雪のなすがままに街にあふれていた綺麗な色も汚い色もどんどんなくなっていき、都会はだんだん無口になっていきます。今日はどこまで積もるのでしょう。

雪になれていない東京でこんなふうに雪が降ってしまうと、さまざまなことが予定どおりにならなくなったり、転倒やスリップなどの危ないことが生じたりして、大変なことはわかっていても、いつもの景色が音さえ吸収されながら白く美しく変わっていくと、不思議にすがすがしい気持ちになります。

普段は熱心に家の前を掃除しない私も「前を通りかかる人が転ぶことのないように」いや、むしろ明日の朝「慌てて飛び出す自分が尻餅をつくことがないように」と、夜の内に雪かきをしました。ざりっざりっという音がなにか爽快でした。見回せば、闇のなかに白い雪の小山があちこちの家の角にできていました。しかし、次の日からの暖かい日差しに今年の雪は数日後には溶けてしまいました。

そういえば、数年前に東京を驚かせた大雪のときはその後も寒い日が続いて、積み上がった雪たちが1週間経っても消えませんでした。あちこちの家の角で消えそこなっていた雪は、まるで、白いマンモスがうずくまっているように見えました。ここに一頭、あそこには親子で、寒風のなかで「そう簡単に春にはならないのだ」と頑張っていた姿を思い出します。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール