自分らしく

傷心

傷心

こぼれ落ちそうな
朱色のピラカンサに
近づいたり

曲がり角で
黄金色のゆずに
手をかざしたり

そのとなりの家の
山吹色のみかんを
見上げたり

道にぽたりと落ちている
緋色の柿のところで
少しだけ止まったり

暖かい色
見つけて歩く

あんなに元気に道ばたを照らしていたイチョウ並木が、12月も半ばになると葉を落としてスカスカし始め、さくらの赤い葉もケヤキの茶色い葉もどんどん木の枝を離れ出します。

雨上がりの朝に街路樹の下を歩いていると、ぬれた道路にペタペタと落ち葉のシールが貼られていることがあります。
「ちゃんと宿題やってきました」 → タイヘンヨクデキマシタ
「朝ご飯食べてきました」 → タイヘンヨクデキマシタ
ごほうびのシールが増えていき、なんだかほめてもらっているみたいで心が嬉しくなります。

そんな、色鮮やかな葉っぱたちの騒ぎが何回かの木枯らしで収まってしまうと、街はずいぶん静かになります。しかし、冬はモノクロームかというとそうでもありません。住宅地を歩いていると、柿やみかん、ピラカンサにユズなど、あかりを灯すように実がなっていることに気づきます。

以前、どこか旅行に行ったときでしょうか、父と一緒に晩秋の山里を歩いていると、オレンジ色の実がなっている柿の木を何本も見つけました。父は「柿の木を植えるのは冬の寂しい季節に、彩りがほしいからなんだよ。そう思わないか?」と言っていたことを思い出します。

今年も、冬を彩る暖かい色を見つけながら父のことを思っています。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール