自分らしく

〈洋楽ポップス回顧録〉(9)ロコ・モーション The Loco-Motion

60年代ポップスのアメリカン・ハードロック版

『ロコ・モーション』(The Loco-Motion)はキャロル・キングとゲリー・ゴフィン夫妻のヒットメーカーコンビによって書かれた作品で、1962年にリトル・エヴァがリリースして全米1位を獲得した有名な曲です。当時は、エヴァが歌いながら踊る「ロコ・モーション・ダンス」が社会現象になりました。

そんな明るく、楽しく、可愛らしさを連想させる大ヒット曲をカバーして、音楽界に大きな話題をもたらしたのが、グランド・ファンク・レイルロード(Grand Funk Railroad 以下、GFR)です。GFRといえば、大音量で演奏するアメリカン・ハードロックの代表格。パワフルかつシンプルなサウンドは多くのファンを生み出し、レッド・ツェッペリンのアメリカ公演の前座を務めたときには「GFRの演奏に熱狂した観客がアンコールを繰り返し、たまりかねたツェッペリンのマネージャーが無理矢理演奏を中止させた」という逸話も残っているほどです。

プロデューサーの説得が生んだ全米1位

となると、なぜそんなバンドが軽いポップスの『ロコ・モーション』をカバーしたのでしょう? そのいきさつにはプロデューサーが大きく関わっているみたいです。ある日、GFRの面々がスタジオでふざけてこの曲を演奏しているのを聴いたプロデューサーが「これは売れる!」と直感し、メンバーたちを説得して1974年、シングル発売に漕ぎ着けます。結果、彼らのバージョンも爆発的にヒットし、「同一曲二度目の全米ナンバー1」という偉業を達成しました。

そのプロデューサーこそ、ミュージシャンとしても活躍し多くのヒット曲を生み出しているトッド・ラングレン。彼はGFRが1973年に同じく全米1位を獲得した大ヒット曲『アメリカン・バンド』(We’re an American Band)のプロデュースも担当しています。

原曲の作詞家への素敵な贈り物

GFRの『ロコ・モーション』は、可愛く軽快なオリジナル曲に対し男臭くむさくるしいアカペラのコーラスからスタートし、ハードなギターのバッキング、いかにもアメリカ的な激しいギターソロへと展開していくハードロックそのもの。アメリカでのコンサートではハイライトで衝突する汽車の映像をバックに流しながらこの曲を演奏し、観客を大いに熱狂させていたようです。

それでも、原曲の詩を生み出したジェリー・ゴフィン氏はこのバージョンに対して「素敵な贈り物みたいだ。今でも、若い子たちに受ける曲だと判って嬉しいよ」と語っています。なお、GFRはこの曲と『アメリカン・バンド』で全米1位を記録したほか、2曲のトップ10ヒットを残していて、ハードロック・バンドにしては優秀な成績を収めています。

▼ロコ・モーション The Loco-Motion
https://www.youtube.com/watch?v=FULmAxNS4hk

サポーター

重森 光
重森 光
紙媒体・Webサイトの編集者・ライター。ひたすらロックとヨーロッパサッカーを趣味として湘南で暮らす。じじいバンドでは、ドラムを担当。

プロフィール